■ 高塀を越えて房垂る山牛蒡
( たかべいを こえてふさたる やまごぼう )
最近、いつも通る道沿いの家の高塀から、赤紫色の小さな実を葡萄の房のように垂らしている植物を見かける。名前は、「洋種山牛蒡(ようしゅやまごぼう)」という。在来種の「山牛蒡」と区別するため少し長たらしい名前になったようだ。
この山牛蒡、とにかく繁殖力、成長力が強い植物で、一度根付くと葉を一杯に広げながら、高さ約2メートルぐらいまで成長するそうだ。それが、堂々と高塀を越えて実を垂らしているとは。本日の掲句は、そんな様子を驚きをもって詠んだ句である。
「山牛蒡の実」が季語になっているかどうかは定かでないが、秋の季語に準じて使用した。尚、「山牛蒡の花」は夏の季語になっている。また、単に「山牛蒡」とすると別種の食用のものをさし冬の季語になるが、音数の関係で「洋種山牛蒡」を「山牛蒡」と短縮した。
因みに山牛蒡については、過去には以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 奇っ怪な実は太古より山牛蒡
② 山牛蒡大胆不敵に結実す
② 山牛蒡大胆不敵に結実す
③ 図太きは我が取柄なり山牛蒡
①は、山牛蒡の実の奇怪さを詠んだもの。多分、太古の昔の姿そのままに、今日までしぶとく、ふてぶてしく生き残ってきたのだろうと思う。②は、所を選ばす大胆に生長し結実する姿を詠んだ。③は、自分もこの山牛蒡にあやかって、図太く生きたいものだという願いをこめて詠んだもの。
洋種山牛蒡は、ヤマゴボウ科ヤマゴボウ属の多年草。原産地は北アメリカで明治初期に渡来。6月~7月頃に淡紅色の花をつけ、8月~10月頃に濃紫色のブドウを小さくしたような実をつける。この実を潰すと真赤な汁が出ることからインクベリーとも呼ばれている。
尚、食用の「山ごぼう」は菊科の植物で根は食べられるが、この「やまごぼう」は全体が有毒で、食べると嘔吐や下痢を起こすそうなので気を付けたい。
山牛蒡を詠んだ句は、ほとんどないので参考句は割愛する。