■ 麗しく遥かインカの百合の咲く
( うるわしく はるかいんかの ゆりのさく )
先日飛騨の高山界隈に旅行した時に、ある農家の花壇で、花の形が百合に似ているが、花弁の模様などが何となく違う感じの植物を見た。その花の名前はアルストロメリアといい、和名が百合水仙(ゆりずいせん)ということを後に知った。
掲句は、そんなことを知って詠んだ句である。上五については「気高き(けだかきや)」「尊きや(とうときや)」なども考えたが、最終的に「麗しく」とした。尚、この花は季語になっていないが、百合に準じて夏の季語として使用した。
事の序(ついで)に、インカ帝国について調べてみたが、この帝国は、南アメリカのペルー、ボリビア(チチカカ湖周辺)等を中心にケチュア族が作った国で、15世紀前半から16世紀前半にかけて繁栄したアンデス文明最後の国家と言われている。
インカとは太陽(インティ)の子という意味で、本来はインカの王のことを指し、インカ民族は、自分たちの国を「タワンティンスーユ(4つの部分)」と呼んだ。
前身となるクスコ王国は13世紀に成立し、1438年のパチャクテク即位による国家としての再編を経て、1533年にスペイン人のコンキスタドール(征服者)に滅ぼされるまで続いた。
世界遺産登録のマチュ・ピチュは、15世紀のインカ帝国の遺跡とされているが、未だに解明されていない多くの謎がある遺跡で新・世界七不思議の1つに選ばれている。
百合水仙は、ユりズイセン(アルストロメリア)科ユリズイセン属の多年草。原産地は南アメリカでアンデス山脈の寒冷地に自生する。わが国へは大正末期か昭和初期に渡来した。分類体系により、ユリ科、ヒガンバナ科に分類されることもある。
草丈は30~100センチになり、披針形の葉が互生する。花期は5月から7月ごろと言われるが種類によっては4月から11月頃まで咲くとのこと。茎頂で分枝して、白、赤、オレンジなど様々な色の花を咲かす。花弁にある斑点やラインは昆虫を誘うためだそうだ。
学名のアルストロメリアは、スウェーデンの植物学者アルストレーメルの名前に由来。別名には、インカの百合の他に、夢百合草(ゆめゆりそう)などがある。