■ 残り梅雨 二句
○ 残り梅雨昏く鎮もる青田かな
( のこりづゆ くらくしずもる あおたかな )
○ 山間の村もけぶるや残り梅雨
○ 山間の村もけぶるや残り梅雨
( やあまいの むらもけぶるや のこりづゆ )
本日の掲句の第一句は、その時に作った句で、列車の窓から見た灰色の空と昏く沈んだ青田を見て詠んだ。外に出れば、雨の音がしたかも知れないが、車内からは非常に静まり返っているように見えた。
上五の「残り梅雨」とは、梅雨が明けた後の、ぐずついた天気のことを言うが、「戻り梅雨」「返り梅雨」とも言う.。これらの名称のどれを使うかは、その時の気分によると思うが、この時は、梅雨の雨がまだ残っていたかという感慨もあり、迷うことなく「残り梅雨」とした。これらは、「梅雨」の一形態ということで、夏の季語となる。
念のため、梅雨明けしたのかどうか確かめると、富山県は7月28日頃に、岐阜県は7月21日頃に梅雨明けしたそうだ。相当日に開きはあるが、丁度県境辺りだったので、ぎりぎり残り梅雨と言っても間違いではないだろう。これを、梅雨明け直前の雨と見れば、「送り梅雨」ということになる。
尚、本句では、「青田」も夏の季語なので季重なりになるが、句の趣向からして言葉の代替ができず、このまま残すことにした。
次に掲句の第二句だが、これは、列車が飛騨の山間を上っていくに連れて、雨が激しくなり、山の家を煙らすほどになってきたのを見て詠んだ句である。山村の蕭条(しょうじゅ)たる情景を表現したものだが、その一方で、これから先が思いやられると少し恨めしく思った。
残り梅雨、戻り梅雨、返り梅雨などの句は、それなりにあると思っていたが、ネットで探しても名のある人の句はなかった。見いだせたのは以下の2句ぐらいである。
【残り梅雨等の参考句】
戻り梅雨寝てゐて肩を凝らしけり (臼田亞浪)
妻にのみ憤りをり返り梅雨 (石田波郷)
戻り梅雨寝てゐて肩を凝らしけり (臼田亞浪)
妻にのみ憤りをり返り梅雨 (石田波郷)
つづく ==>>