■ 出番待つ姫踊子草や土手の袖
( でばんまつ ひめおどりこそうや どてのそで )
道端や川辺などで、野草の花もだんだんと咲き始めてきた。これまでも春の野草をいくつか紹介したが、今日は「姫踊子草(ひめおどりこそう)」について紹介したい。この野草は、一か所にたくさん群生する野草だが、今回は、土手に打ち込まれた杭の陰にひっそり数本だけ花を咲かせているのを見つけた。
姫踊子草は、写真のように、赤紫色の葉を何枚も重ね、その間から薄紅色の小さな花をいくつか咲かす。遠くから見ると、踊子が衣裳をつけて踊っているようにも見える。ただし、その名前の由来は別のところにある。
植物の名前では、「姫」は小さいという意味で、ほとんどの場合、姫という文字が付かない植物が他にある。「姫踊子草」にも、ご多分に漏れず「踊子草」という植物があるが、その名前は、花の形が、笠をかぶった踊子に似ているところからつけられたそうだ。(最後尾の写真「姫につかない踊子草」参照)
姫踊子草は、この踊子草を一回り小さくした感じなので、この名前になったとのこと。ただ、姫踊子草の場合は、既述の通り、花そのものよりも草花全体が踊子のように見える。尚、姫のつかない「踊子草」は夏の季語なので注意を要する。
因みに、姫踊子草に関しては、かつて以下の句を詠んでいる。
姫踊子草衣重ねて乱舞かな
( ひめおどりこそう ころもかさねて らんぶかな )
この句は、姫踊子草が群れて咲いているのを見て詠んだもの。色は些か地味だが、遠くから見ると、人気の女性アイドルグループが乱舞しているようにも見える。
姫踊子草は、シソ科オドリコソウ属の越年草でヨーロッパ地方原産。明治時代に渡来し帰化した。花期は、3月から6月。白花のものもある。
参考句だが、「姫踊子草」で詠んだ句は残念ながらほとんどない。一方「踊子草」で詠んだ句は結構あり、中には「姫踊子草」を詠んだと思われるものも混ざっている。ただ、明確に判別できないので、ここでは取り上げないことにした。
姫のつかない「踊子草」 2013年4月撮影