■ 凌霄の花の屋敷も今はなし
( のうぜんの はなのやしきも いまはなし )
その一つが、本日取り上げる「凌霄花(のうぜんかずら)である。植物園の「四季彩の丘」に設置された棚や樹木を覆うように花を咲かせていた。
この花木は、近辺でも何軒かの家の玄関口に植えられ、毎年この時期花を咲かせていたのだが、残念ながら最近は見られない。
一軒は、あまりも伸びすぎるので伐採され、別の一軒は主が亡くなって、家が解体されマンションが建てられたためである。誠に残念ではあるが止むを得ない。
「凌霄(のうぜん)」は、「凌霄花」を短縮化した呼び名である。俳句では夏の季語になっている。*写真は植物園で撮影したもの。
【関連句】
① 街角の華燭の花よ凌霄花
② 絡まりて天をうかがう凌霄花
③ 凌霄の雨に冷たき落花かな
① 街角の華燭の花よ凌霄花
② 絡まりて天をうかがう凌霄花
③ 凌霄の雨に冷たき落花かな
②は、高木などに絡まりながらどこまでも上を目指す、凌霄花の逞しさを見て詠んだ句。
③は、冷たい雨に打たれて落花している凌霄花を見て詠んだもの。(記事最後尾の写真参照)
花期は6月~9月。茎が長く伸ばし、付着根(ふちゃくこん)で大きな木や塀を這い登り、そこから花軸を垂らしてラッパ状の橙色の花をつける。
漢名は、「凌」に「しのぐ」、「霄」には「空の果て」の意味があり、空に向かって高く咲く花ということで付けられたとのこと。
【凌霄花の参考句】
日ざかりや凌霄おごる松の上 (森鴎外)
抱かれ居る児の跳るなり凌霄花 (幸田露伴)
青空に凌霄の蔓出羽の國 (八木林之介)
凌霄花の唇ひたすにはたづみ (池元道雄)
凌霄が垂れ漠然と今生や (池田澄子)