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Channel: 写真・俳句ブログ:犬の散歩道
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廃ビルを覆い尽くせり蔦若葉

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■ 廃ビルを覆い尽くせり蔦若葉
           ( はいびるを おおいつくせり つたわかば )


イメージ 1今日取り上げる「蔦(つた)」については、これまで、秋に色づく「蔦紅葉(つたもみじ)」で何度も取り上げてきた。

しかし、「蔦若葉(わかば)」については、これまで取り上げることはなかった。この時期は、比較的取り上げる題材が多かったせいだろう。

今回、敢えて取り上げようと思ったのは、もう何十年も廃ビルのまま放置されている建物の壁一面を、蔦が全面的に覆っているのを見たからである。

本日の掲句は、その様子をそのまま詠んだ句。

これまで何度も見てきたはずだが、改めて見て、その蔦の生命力の強さに驚いた。間違って地球が廃墟になっても、恐らく、こういう蔦が短期間にビルを覆ってしまうに違いない。




イメージ 2

尚、「蔦若葉」は、「蔦の若葉」「蔦青葉」「青蔦」ともいい夏の季語。但し、単独の「蔦」や「蔦かずら」、更に「蔦紅葉」は秋の季語。

事のついでに言えば、「草若葉(くさわかば)」は春の季語だが、木々の若葉は夏の季語。個別名を冠した季語としては、「樟若葉(くすわかば)」「柿若葉(かきわかば)」「椎若葉(しいわかば)」「朴若葉(ほうわかば)」などがある。

イメージ 3因みに、「蔦若葉」ではないが、「青蔦」で詠んだ過去句が一句だけあった。

  青蔦の土塀に描く和の心 

これは、寺の築地(ついじ)の土壁に青葉を広げている蔦を見て詠んだ句である。その姿が何となく日本画を彷彿とさせたので下五を「和の心」とした。

イメージ 4ところで、「蔦」には「冬蔦」と「夏蔦」がある。「冬蔦」は常緑で落葉せず、一般に「木蔦(きづた)」と呼ばれ冬の季語にもなっている。

一方、「夏蔦」は紅葉し落葉する。単独で「蔦」という場合は、大抵この「夏蔦」を指す。また、「蔦若葉」は、この「夏蔦」の青葉をのことをいう。

イメージ 5蔦(夏蔦)は、ブドウ科ツタ属のつる落葉低木。原産地はアジア、北アメリカなど。夏に小さい黄緑色の地味な花が咲かせ、秋に黒紫色のぶどうに似た実をつけるが、両方とも目立たない。
*木蔦(冬蔦)は、ウコギ科キヅタ属の常緑つる性木本。

葉の方が好まれ、夏は緑のカーテンとして、秋は艶やかな紅葉が愛でられる。

イメージ 6名前は、巻きひげの吸盤で樹木や壁を「伝(つた)って」伸びることから「つた」と付けられたと言われている。また、漢字の「蔦」は、地上に繁殖する"草"と空を翔ける"鳥"とを組合わせた文字で、生命力の強い縁起の良い植物という意味が込められているとのこと。

イメージ 7「蔦若葉」を詠んだ句はままある。以下には、ネットで見つけたものから、いくつか選んで掲載した。

  【蔦若葉の参考句】
   標札をかくす一枚の蔦若葉   (山口青邨)
   僧形となりし少年蔦若葉     (石寒太)
   蔦若葉もえて小暗きビルの口  (山田弘子)
   蔦若葉磨き込まれし芸に似て (高澤良一)
   原宿を雨過ぎにけり蔦若葉   (芹沢統一郎)

イメージ 8


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