■ 止めどなく烏のえんどう何故咲くの
( とめどなく からすのえんどう なぜさくの )
さて、本日は目を下の方に転じ、「烏のえんどう」という野草を取り上げたい。
特に珍しいという訳ではないが、最近あまりにもよく見かけるので取り上げることにした。
とにかく、道端、川辺、野原、公園、空地などの草地に行けば、大抵生えており、まさに今、蝶形の紅紫色(ピンク)の花を所かまわず咲かせている。
本日の掲句は、そんな様子を詠んだ句。
中七下五は「烏のあかちゃん何故鳴くの」のフレーズを思い出し援用した。「烏のえんどう」は歴とした春の季語。
ところで、「烏のえんどう」については、「烏の」+「豌豆(えんどう)」と覚えている人が多いのではないだろうか。(かくいう自分もそうだった。)
しかし、正しくは「烏」+「野豌豆(のえんどう)」。「野豌豆」は中国名からきており、種子が黒いことから「烏」が冠せられたと言われている。(異説あり)
【関連句】
① 沿道の烏野豌豆から雀
② どこ行けど烏と烏野豌豆
③ 鳴きもせで蔓延る烏野豌豆 *蔓延る(はびこる)
②は、烏(鴉)はどこにでもいる鳥だが、烏野豌豆もどこに行っても咲いていると詠んだたわいもない句。
③は、名前にある烏(からす)に着目し、上五に「鳴きもせで」をおいた。
*【せで】 サ行変格動詞「す」の未然形+打消の接続助詞「で」。~しないで。
花期は3月~6月。エンドウに似た小型の紅紫色の花を付ける。豆果は熟すると黒くなって晴天の日に裂け、種子を激しく弾き飛ばす。
ついてに言えば、近縁種に「雀野豌豆(すずめのえんどう)」がある。これは、「烏野豌豆」よりも小さいということで、その名がつけられた。 (最後尾の写真参照)
面白いことに、その中間のものがあり、その名が「烏雀間草(かすまぐさ)」。烏の「か」と雀の「す」に「間(ま)」をつけた名前。ちょっと笑える。
子供よくきてからすのゑんどうある草地 (川島彷徨子)
*雀野豌豆