■ 吉野の桜 三句
○ 吉野なればやはり桜は山桜
( よしのなれば やはりさくらは やまざくら )
○ 息切らし登れば見ゆる千本桜
○ 息切らし登れば見ゆる千本桜
( いききらし のぼればみゆる せんぼんざくら )
○ 遠山にかかる吉野の花の雲
○ 遠山にかかる吉野の花の雲
( とおやまに かかる よしのの はなのくも )
まだ、一度も行ったことがなかったので、数日前に急遽行こうと決め、京都駅から近鉄電車に乗って行った。(所要時間は片道2時間程。)
吉野駅に降りで先ず驚いたのは観光客の多さである。
後で調べて分かったのだが、吉野はいくつかのエリアに分かれていて、下千本、中千本はピークを幾分過ぎていたが、上千本は丁度満開、奥千本はこれから。道理で人が多かった訳だ。
先ずは、駅前に置いてあった案内マップを見ながら、中心の坂道をゆっくりと登る。上を見ると少し散った桜も見られたが、まだかなり咲いている。
ただ、家の近くで見る桜と少し印象が違うのは、そのほとんどが「染井吉野」でなく「白山桜(しろやまざくら)」であるため。*「白山桜」は「山桜」の別称。
ご存知の方も多いと思うが「山桜」は、花と同時に赤い葉も開く。葉に先駆けて花を咲かす「染井吉野」のような華やかさはないが、慎ましくもしっとりとした美しさがある。
第三句は、向こうの山に咲いている桜を雲に喩えて詠んだ句。「花の雲」は春の季語。
【吉野(山)の桜にまつわる西行法師の和歌】
なにとなく春になりぬと聞く日より心にかかるみ吉野の山
吉野山こずゑの花を見し日より心は身にもそはずなりにき
吉野山花の散りにし木の下にとめし心はわれを待つらむ
木のもとに旅寝をすれば吉野山花のふすまを着する春風
吉野山こぞのしをりの道かへてまだ見ぬかたの花をたづねむ
【吉野の桜に関する参考句】
吉野にて桜みせうぞ檜笠 (松尾芭蕉)
これはこれはとばかり花の吉野山 (安原貞室)
みよし野のちか道寒し山桜 (与謝蕪村)