■ 三椏や三択重ね今ここに
( みつまたや さんたくかさね いまここに )
今日も昨日に続いて黄色いを咲かす花木で、「三椏(みつまた)」を取り上げたい。
この花木は、冬の間、モップのような蕾を、葉の落とした木に満遍なく垂らしていたが、今その蕾が徐々に開きだし、黄色の花園を形成している。
「みつまた」という名前は、枝が常に三本ずつに分岐することからつけられたそうだが、右の写真は、その枝の最先端で花が咲かせている状態を写している。
漢字では「三椏」と書くが、「椏」は「あ」ともよみ、木の股の意。そのまま「三又」とも書く。
本日の掲句は、そんな三椏を自分の人生に重ねて詠んだ句。「三椏の花」は春の季語。
言うまでもなく「三択」とは、「三者択一」のことで、三つの中からどれか一つを選ぶこと。人生の節目節目では、三つに限らず幾つかの選択肢の中から行く方向を何度も選んできた。その結果が現在の自分なのだが、あの時、違う選択肢を選んだらどんな人生だっただろうと思うことがある。
その選択が、正解だったのか不正解だったのか、考えても詮無いことだが、もはや後戻りができない以上、今の現実を受け入れて、あの三椏のように花を咲かせるしかないだろう。
【関連句】
① 三椏の三枝三枝に花の燦
② 二股は悪しされど三椏は美し *悪し(あし)*美し(うまし)
③ 三椏の枝の先々花一つ
②は、「三椏」を「二股」にかけて詠んだ戯れ句。「人間関係、殊に男女関係において二股を掛けるのは良くないと言われるが、植物の三椏は、それとは全く関係なく美しい」というのが句意。
③は、三つに分かれた枝の先々に、花が一つずつ咲いていることと詠んだもの。但し、この花は、いくつもの小花が集まって、一つの大花(塊)を形成したもの。
蕾は12月頃から見られるが、それが3月から4月にかけて綻び、黄色や赤色のラッパ状の小花が密集させた華やかな花となる。花は沈丁花に似た香りを放つ。
【三椏(花)の参考句】
三椏の花の白さの幾朝か (中村汀女)
三椏の花軽々とまはりけり (八木林之助)
三椏の花に瀬音の遠からず (行方克己)
やすらぎや三椏は咲き垂るる花 (林翔)
往きも帰りも三椏の花明かり (島谷征良)
*紅花三椏