■ 赤き葉に黄花零せり柊南天
( あかきはに きばなをこぼせり ひいらぎなんてん )
「河津桜」や「寒桜」などは既に方々で開花しているので、何を今更という感じもするが、やはり日本の桜の8割を占めるという染井吉野が一斉に咲かないと桜のシーズンが来たとは思えない。
京都近辺では、今年、3月24日前後からその開花が始まり、それから1週間ぐらいかけて満開になるようだ。
さて、その桜については今後本ブログでも何度か取り上げると思うが、今日は、やや地味ではあるが、黄色い花を咲かせ始めた「柊南天(ひいらぎなんてん)」を取り上げたい。
この植物は、近所のあるお屋敷の周囲に植えてあり、まさに今、棘のある赤い葉の間から花茎を伸ばし、小さな黄色い花を泡が吹くように咲かせている。
本日の掲句はそんな様子を詠んだ句。「柊南天の花」は春の季語。(季語として認めていない歳時記もある。)
尚、この植物は常緑性の植物だが、「南天」と同様、日当たりの加減で冬から秋にかけて一部紅葉する。そして春に新しい葉が生えてくると落葉する。
「南天」は、その読みが「なんてん=難を転ずる」に通じると言われ、「柊」は、葉の鋭い棘によって邪気を払うとされている。
また、葉に鋭い棘がありチクチクするので、公園や家周りなどで進入・立入を防ぐために植えられることもある。
因みに、「柊南天の花」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 天辺に花咲かせたり柊南天 *天辺(てっぺん)
② 恙無く柊南天花盛る *恙無し(つつがなく)
③ 棘の葉に守られ咲きける柊南天 *守られ(もられ)
②は、病気や災難がないことを意味する「恙無し」を、柊南天の有難い名前に掛けて詠んだもの。
③は、棘がたくさんついた葉に守られるように花を咲かせている様子を見て詠んだ。
【参考メモ】 南天:メギ科アンンテン属。 柊:モクセイ科モクセイ属。
「柊」や「南天」について詠まれた句は沢山あるが、「柊南天」はというと、名前が長いせいか、ほとんど詠まれていない。よって参考句は割愛する。