■ 始まりはいつも新し沈丁花
( はじまりは いつもあたらし じんちょうげ )
今、その莟の一つ一つが順々に綻び始め、毬のような花となって、木全体に咲き乱れている。
本日の掲句は、その花の様子を見て詠んだ句である。
沈丁花の花弁らしきものは、実は萼(がく)なのだが莟の時は赤紫色。開くと裏側の真っ白な部分が見えるようになる。
その赤紫と白のコントラストが実に美しく、それが緑の葉に映えて、得も言えぬ景を醸し出す。
上五、中七の「始まりはいつも新し」は、その新鮮なイメージから浮かんだ言葉。
「沈丁花」は「沈丁」とも言い、春の季語になっている。
因みに、「沈丁花」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 紫の内に真白く沈丁花
② 甘かおるブーケのごとく沈丁花 *甘かおる(あまかおる)
③ 花も香もはみ出しており沈丁花
②は、花の咲いた姿が小さいブーケ(花束)のようにも見え、それに香りを添えて詠んだ。
③は、花が生垣や玄関先からぐっとはみ出して咲いている様子を詠んだもの。
雌雄異株で、雌株は直径1cmほどの赤い実をつける。日本にある木は、なぜかほとんどが雄株で実を見るのはまれだとのこと。(自分もまだ見たことがない。)
香りの良い花として、夏の梔子(くちなし)、秋の金木犀(きんもくせい)を先ず思い出すが、春はやはり沈丁花である。
【沈丁(花)の参考句】
沈丁の香の石階に佇みぬ (高濱虚子)
沈丁の下枝影して日闌けたり (鈴木花蓑)
沈丁の坂開港のむかしより (宮津昭彦)
沈丁の香にそひ上る館かな (星野立子)
沈丁にすこし開けおく夜の障子 (有働亨)