■ 嫋やかに枝垂るる梅や城南宮
( たおやかに しだるるうめや じょうなんぐう )
この神社は、平安遷都の際に都の守護と国の安泰を願って創建された神社である。
近年では、明治維新を決定づけた鳥羽伏見の戦いが行われた地の神社としても知られている。
戦いはこの参道に設置された薩摩藩の大砲により始まったそうだ。
現在この神社は、「方除の大社」と仰がれ、引越・工事・旅行の安全、厄除を願う全国の人々から、日々の暮らしの守り神と、篤く尊崇されているとのこと。
さて、今回行った目的は、参拝とともに枝垂梅(しだれうめ)と多種多様な椿が植わっている庭=神苑を見るためである。
今日取り上げるのは、この内の枝垂梅。庭には紅白数十本のものが植えてあったが、残念ながら、ほとんどのものが蕾のままで、満開のものは白梅の数本だけだった。
ところで、掲句上五の「嫋やか(たおやか)」という言葉は、最近あまり使わないが、「姿・形・動作がしなやかでやさしいさま。」をいう。
用例としては、「嫋やかな乙女」などが上げられるが、こういう風に言われた時、当の女性はどう思うだろうか。嬉しいような悲しいような、ちょっと微妙かもしれない。
次に、女偏の漢字には、「女の一生」「生活・生命」「地位」に関連する文字が多いこと。例えば、以下の通り。
始、娘、婚、姻、姓、嫁、婿、妊、娠、娩、婦、嬶、姑、姥、婆、
姫、媛、妃、嬢、姉、妹、奴、婢 など
好き(すき)、嫌い(きらい)、嬉しい(うれしい)、妬む(ねたむ)、
嫉む(そねむ)、媚びる(こびる)、妨げる(さまたげる)、如、妙、妖 など
また、女偏以外にも女がつく重要な漢字がある。
要、安、姿、委、妄 など
むしろ、漢字ができた頃は、母系制社会で、女性中心の社会だったためなのではないかとも考えられている。ネットで調べた限りでは、定説はまだなさそうだが、改めて見れば何とも不思議な漢字の世界ではある。
【枝垂梅の参考句】
冬麗ら花は無けれど枝垂梅 (高浜虚子)
雪解のゆらゆらとして枝垂梅 (阿波野青畝)
枝垂梅しだれ比べて地にとどく (角川照子)
胸白き鳥来て枝垂梅こぼす (町田しげき)
枝垂梅ためらひもなく枝は地に (塩川雄三)