■ 三椏の蕾さながら散る霰
( みつまたの つぼみさながら ちるあられ )
取り上げるのは「三椏(みつまた)」の蕾。現在、春の開花に備え、様々な植物の蕾が膨らんできているが、三椏の蕾は、個別に見ても、全体的に見てもユニークである。
まず、個別に見れば、モップあるいはブラシのような感じである。そのことをかつて以下のように詠んだ。 (右写真参照)
三椏の蕾ブラシの如く冬
(原句一部修正)
また、少し離れて木を全体的に見れば、まるで雪が降っているように見える。 そのことを過去には以下のように詠んだ。
三椏の蕾小雪の降る如く
本日の掲句は、この句とあまり変わらないが、今現在の三椏の蕾を記事に取り上げるために敢えて詠んだ。「小雪」がいいか「霰(あられ)」がいいかは迷うところである。
尚、「三椏の花」は春の季語だが、「三椏の蕾」は季語でないので、本句では「霰」を冬の季語として使った。 注)比喩で季語を使った場合、季語としては機能しないという説もある。
事のついでに言えば、気象用語で、氷の粒が直径5mm未満であれば「霰」、5mm以上なら雹 (ひょう)というそうだ。
蕾は12月頃から見られるが、それが3月から4月にかけて綻び、黄色や赤色のラッパ状の小花が密集させた華やかな花となる。花は沈丁花に似た香りを放つ。
名前は、 枝が常に三本ずつに分岐することからつけられたとのこと。漢字では「三椏」と書くが、「椏」は「あ」ともよみ、木の股の意。そのまま「三又」とも書く。