■ 今年また確と菰巻く大蘇鉄
( ことしまた しかとこもまく おおそてつ )
そんな中、目を引いたのが菰巻き(こもまき)にされた「蘇鉄(そてつ)」である。毎年12月初めに施され、写真のような格好で冬を過ごし、3月中旬ごろに外される。
本日の掲句は、そんな情景を見て詠んだ句。いつものことだが、これを見ると本格的な冬が来たことを実感する。「菰巻き」は「薮巻き(やぶまき)」ともいい冬の季語。
ところで、菰巻きとは、一般的に松や杉の木の幹に腹巻のように菰を巻き付けることをいうが、その目的は、冬を越すために下りてくる害虫を駆除することにある。
菰の中に害虫の幼虫を止め、春先にはずして焼く。必ずしも防寒目的ではない。
しかし、蘇鉄など熱帯・亜熱帯植物の菰巻きは、それとは全く違い、雪や霜のため葉が傷まないよう、防寒対策で実施される。そのため全体を覆うように菰を巻く。
同じ菰巻きでも目的は大きく違うようだ。(低木や竹などの菰巻きは雪折れを防ぐために行う。)
【菰】 真菰(まこも)を粗く編んだむしろ。現在は藁を用いることが多い。
【関連句】
① 辛抱の菰に巻かれし蘇鉄かな
② もがく手のオブジェの如く菰巻き蘇鉄
③ 春待つや菰の蘇鉄も蠢かん
②は、菰に巻かれた蘇鉄が、地中から出ようともがく手のオブジェ(芸術品)のようだと詠んだもの。
③は、1月下旬に菰に巻かれた蘇鉄を見て、蘇鉄も春が待ち遠しく、菰の中で蠢いていることだろうと詠んだもの。
生育は遅いが成長すれば樹高は8m以上にもなる。非常に長寿で樹齢が1000年を超すものもあるそうだ。
蘇鉄の名前の由来は、この木が衰えた時に、幹に鉄釘を打ち込んだり鉄類を株元に与えると蘇って元気になる、すなわち「鉄で蘇生する」という「いわれ」に因む。
【菰巻(き)の参考句】
昼餉摂る菰巻と日をわかちつつ (宮津昭彦)
菰巻をしてことごとく傾ぎけり (藤本美和子) *傾ぐ(かしぐ)
菰巻を枝にもらへる松の古り (綾部仁喜)
菰巻にされ大蘇鉄王者の風 (富田木荘)
城苑の菰巻蘇鉄武骨なる (梶島邦子)
*7月頃の蘇鉄 (真ん中の円柱形のものは雄花)