■ 山百合の花重ければ倒れたる
( やまゆりの はなおもければ たおれたる )
ただ、百合は園芸種も含めると非常に多く、見様によっては、違う印象を持つ百合も結構多い。
今日取り上げる「山百合(やまゆり)」は、野生種の中でも最も代表的な百合であり、その大きさや風貌から「ユリの王様」とも呼ばれている。
夏の花の女王という人もいるが、大柄で、花の形も大胆であることから、男っぽさ、逞しさを象徴する花と言っても良いだろう。
そんな山百合だが、植物園でいつ見ても気になるのは、必ずと言って良いほど茎に沿って支柱が付けられていることである。
どうもこの百合は、背丈が高くなり、その先に大きな花を咲かすので、その重みで傾いたり、倒れたりするようである。実際にそんな光景も何回か見た。
本日の掲句は、そんな山百合を見て、いささか残念と思いつつ詠んだ句である。華やかではあるが、どんな物にも難点はあるようだ。「山百合」は、他の百合と同様、夏の季語。
【関連句】
① 山百合や山路に咲かば殊ならん
② 山百合の雄々しく咲ける杣の道
*紅筋山百合①は、山百合は植物園ではなく山路に咲くとまた違った趣があるだろうと詠んだもの。
*殊なり(ことなり):特にすぐれている。格別である。
②は、①の山路を杣(そま)の道に置き換えて詠んだ句である。杣とは、「木材を切り出す山(杣山)、木材を切り出す人(杣人、樵)など」のことをいう。
②は、①の山路を杣(そま)の道に置き換えて詠んだ句である。杣とは、「木材を切り出す山(杣山)、木材を切り出す人(杣人、樵)など」のことをいう。
花期は7~8月頃。花は、花弁が外に弧を描きながら広がり、茎の先端に1~10輪ほど咲く。その大きさは直径20cm以上でユリ科の中でも最大級であり、その重みで全体がしばしば傾く。
*紅筋山百合基本種の花色は白色で花弁の内側中心には黄色の筋、紅色の斑点がある。変種に被片の中央に太い赤色があるものがあり「紅筋山百合」という。花の香りは、甘く濃厚でとても強い。
尚、大柄な白い花で、花びらの先が大きくカールしている園芸品種に「カサブランカ」がある。これは、日本に自生していた山百合がアメリカへ渡り、交配の結果できたものだそうだ。名前は、映画の舞台にもなったモロッコの都市「カサブランカ」(白い家という意味)に因む。 (最後尾の写真)
【山百合の参考句】
山百合や崩れて残る岨の道 (正岡子規)
*岨(そば):山の切り立ったけわしい所。
山百合を捧げて泳ぎ来る子あり (富安風生)
山百合にねむれる馬や靄の中 (飯田蛇笏)
山百合の屋根にひらきしまひるかな (黒田杏子)
毒蛇を見し山百合の白を見し (山田弘子)
山百合を捧げて泳ぎ来る子あり (富安風生)
山百合にねむれる馬や靄の中 (飯田蛇笏)
山百合の屋根にひらきしまひるかな (黒田杏子)
毒蛇を見し山百合の白を見し (山田弘子)
*カサブランカ :純白で班点がない。