■ この感じ薔薇の漢字に似たるかな
( このかんじ ばらのかんじに にたるかな )
広大なバラ園には多種多様の薔薇が植えてあるが、それが一斉に開花すると真にゴージャスである。
先日、牡丹(ぼたん)を「花の王」と称すると記したが、薔薇は華やかさ、艶やかさにおいては全く見劣りするところがなく、まさに「花の女王」と言うに相応しい。
本日の掲句は、そんな薔薇の花を見ながら、ふと「ばら」とはどんな漢字だったかなと思い出しながら詠んだ句である。
字の感じは花の感じに似ていたと思うが、いざ書こうと思うとなかなか書けないものだ。「薔薇」は夏の季語。
ところで、植物名においては難解な漢字のものが非常に多い。その中には当て字のために読めないものも多いが、字画が多くて書けないものもいくつかある。先日取り上げた「躑躅(つつじ)」もその一つで、直ぐには書けない。
他にも「鬱金(うこん)」があるが、この名前の「鬱」という漢字は、常用漢字2136字中でもっとも画数が多く29画もある。
それ故、この漢字を書ける人は非常に少ないと言われているが、以下のように覚えると良いと言う記事を見つけたので参考まで転載しておきたい。書ければ自慢できるかも。
鬱
「リン(林)カーン(缶)は(冖)アメリカン(※=米)コー(凵)ヒー(ヒ)3(彡)杯飲む」
話は戻って、「薔薇」に関しては過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 薔薇園は溺るるほどに薔薇に薔薇
② 園の薔薇目いっぱいに美しき
③ 反り返る花片重ねて薔薇となる
①は、園内に何百種類もの薔薇が咲き誇っている様子を見て詠んだ句。その景を「溺るるほどに」と表現してみた。
②は、薔薇の花の美しさを「目いっぱい」にと表現したが、これは、「限度いっぱいに」という意。文字通り「目にいっぱい」という意をかけた。
③は、特に花の形に注目し、花片(かへん)が反り返り、それが何枚も重なって、ふわっとした独特な形を作っていることを詠んだ。
薔薇は、バラ科バラ属の種の総称。低木または木本性のつる植物で、葉や茎に棘があるものが多い。「ばら」の名は、和語の「いばら(茨)」が転訛したもの。
薔薇は、古くから繁栄と愛の象徴とされ多くの人に愛好されてきた。エジプトの女王クレオパトラ、暴君として知られる第5代ローマ皇帝ネロ、ナポレオン・ボナパルトの皇后ジョゼフィーヌなどは熱烈な愛好家だったらしい。
薔薇が、日本で今のように「花の女王」として愛好されるようになるのは明治以降で、その頃は西洋の「高嶺の花」だった。しかし、その後、皇族、華族、高級官僚といったパトロンを得て、日本でも徐々に愛好され始め、大正から昭和の頃には一般家庭にも普及したとのこと。
「薔薇」を詠んだ句は非常に多く、本ブログでも何度か紹介しているが、以下には、その中から好むものをいくつか選んで掲載した。
【薔薇の参考句】
手の薔薇に蜂来れば我王の如し (中村草田男)
薔薇嗅ぎて去る黒髭の郵便夫 (辻田克巳)
花びらの薔薇のかたちを守りけり (辻美奈子)
車椅子の母のり出して薔薇をかぐ (藤田郁子)
どの家も薔薇を咲かせて新開地 (前橋春菜)