■ アカシアの花さながらに雨のごと
( あかしあの はなさながらに あめのごと )
「アカシア」と言えば、かつて西田佐知子が歌った「アカシアの雨にうたれて このまま死んでしまいたい~」という一節を思い出す。
当日は幸いなことに雲一つない快晴だったが、「アカシア」の高木に垂れ下がった花房を見上げると、まるで雨が降っているようにも見える。
本日の掲句は、そんなイメージを詠んだものである。(ちょっと大げさかも)「アカシアの花」は夏の季語。
因みに、「アカシア」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
アカシアの雨に悲しき響きあり
この句も、先に挙げた歌に関連させて詠んだもの。
ところで、本ブログでも何回か触れたが、この「アカシア」の本当なの名前は「ニセアカシア」である。「ニセ」とは文字通り偽物の意。
何でこんな名前になったかというと、明治時代初期に日本に渡来した時、これを「アカシア」と紹介したが、明治時代末期に本物のアカシアが渡来し、区別するために「ニセアカシア」にしたそうだ。
それでは、本物のアカシアはというと、春に黄色の花をつける「銀葉(ぎんよう)アカシア」など。混合を避けるために今は一般に「ミモザ」と言われている。
このことは、俳句の季語にも影響し、本物の銀葉アカシアなどを「ミモザ」と呼び春の季語とし、「ニセアカシア」の方は従前どおり「アカシア」と呼び夏の季語にしている。
因みに、北原白秋の「この道」に歌われる「あかしやの花」、石原裕次郎「赤いハンカチ」、松任谷由実「acaciaアカシア」などに出てくる「アカシア」は全て「ニセアカシア」。偽物が本物に完全に成り代わっている。もっとも「ニセアカシア」では詩(うた)に詠みにくいが・・・。
「アカシア」こと「ニセアカシア」は、マメ科ハリエンジュ属の落葉高木。北アメリカ原産で明治中頃に渡来。花期は5月~6月。白い香りのある蝶形の花が多数房状に垂れて咲く。紅花をつける種類のものもある。(最後の写真)
和名は「針槐(はりえんじゅ)」。この名は、槐(えんじゅ)に似た木で棘(托葉から変化)をもつことから付けられた。
花を花穂ごと天ぷらにして食べるほか、新芽は和え物や油炒めで食べることができる。花から上質な蜂蜜が採れ、有用な蜜源植物でもある。
既述の通り、俳句ではニセアカシア(針槐)を「アカシア」と呼称し、詠まれた句もままある。以下にはネットで見つけた句をいくつか参考まで掲載した。
【アカシアの参考句】
風塵のアカシア飛ぶよ房のまま (阿波野青畝)
鬱と高し花アカシアの万の房 (神蔵器)
万緑の中層々と贋アカシア (橋本多佳子)
アカシアの大地やそこに花の幽 (石寒太)
アカシアの花影揺るる時計塔 (前田白雨)
*桃色針槐(モモイロハリエンジュ)