■ 満開になるも寂しき冬桜
( まんかいに なるもさびしき ふゆさくら )
▼子福桜
紅葉もほぼ終わりを迎え、園内には裸木ばかりが目立つ。花と言えば、秋の名残とも言えるコスモスや菊などが、ある一画でこじんまりと咲いているだけ。
何にもないなと思いながら、蕭条とした内を暫く散策し、そろそろ帰ろうかと思っていた矢先に遭遇したのが「子福桜(こぶくざくら)」。
前回来た時もそれなりに花を咲かせていたが、今が丁度満開になっているようで、木全体に目いっぱい花を咲かせていた。
本日の掲句は、その桜を見て詠んだ句である。花そのものは結構可憐で、春の桜と同様に美しいのだが、ひっそりとした雰囲気の中で咲くためか、華やかさよりも寂しさを感じさせる。
下五については、「子福桜」があまり知られていないため「冬桜」とした。俳句では、冬に咲く桜を総称して「冬桜」あるいは「寒桜」と言い、冬の季語にもなっている。但し、「冬桜」「寒桜」は、個別の品種名にもなっているので注意を要する。
▼子福桜
尚、植物園では「子福桜」の他に「冬桜」(個種)、「四季桜」が満開だったので、写真のみ掲載した。
*子福桜:十月桜と支那実桜の雑種。開花は十月桜と同様。花弁が20枚~30枚と多い。1つの花から2つ以上の実をつけるので、この名に。
*冬桜:11月~12月と4月の二度咲き。白色~淡紅色で一重咲き・小輪。別名小葉桜。
*四季桜:豆桜と江戸彼岸との雑種。10月頃から咲き始め4月に盛りとなる。花は一重の白又は淡紅色
▼子福桜
因みに、「冬桜」「寒桜」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 塀越しに春の華やぎ冬桜
② 学び舎の試験控えて寒桜
③ おしなべて冬の桜は淋しかり
▼子福桜
①は、12月中旬頃ある路地を歩いている時に、塀越しに冬桜を見て詠んだ句。
②は、1月下旬ある大学の横を通った時に、満開になっている寒桜を見て詠んだ句。
③は、冬桜の見ての印象を詠んだもの。着想は本日の掲句と類似。
②は、1月下旬ある大学の横を通った時に、満開になっている寒桜を見て詠んだ句。
③は、冬桜の見ての印象を詠んだもの。着想は本日の掲句と類似。
▼子福桜
「冬桜」「寒桜」を詠んだ句は結構ある。本ブログでも以前何句か紹介したが、今回はそれ以外のものを選んで掲載した。
【冬桜、寒桜の参考句】
寒桜鰤寄る潮のうちかすみ (水原秋櫻子)
寒桜交はり淡くして長し (古賀まり子)
天つ日の褻にも晴れにも寒桜 (石原八束)*褻(け):晴れでないこと、日常。
冬桜波のひかりと光りあひ (正円青灯)
うす紙のごとき日をのせ冬桜 (行廣すみ女)
▼冬桜
▼冬桜
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