Quantcast
Channel: 写真・俳句ブログ:犬の散歩道
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1553

近づけば虫が舞い立つ花八つ

$
0
0
■ 近づけば虫が舞い立つ花八つ手
                                               ( ちかづけば むしがまいたつ はなやつで )

イメージ 1冬に咲く花と言えば、山茶花(さざんか)、石蕗(つわぶき)などごく僅かであるが、良く見過ごされる花に八つ手(やつで)の花がある。

そのことを知人に話したら、大きい葉っぱの八つ手は知っているが、その花は見たことがないと言う。

かく言う自分も数年前までは、八つ手の花について全く知らなかった。あんなに大きい花なのに何故だろう。

結局関心のないものは、どんなものも目に入いらないのだと改めて認識させられた。さすれば、人により見ている世界も微妙に違うと言えよう。

さて本日は、その八つ手の花を取り上げたい。花は、遠くから見るとピンポン玉のように見えるが、近くで見ると小さい花が集まって球状になっていることが分かる。殊に、柔らかな雄蕊を伸ばしている花姿は美しい。

八つ手は、あの大きな葉で魔物を追い払うとも言われ、縁起の良い木として近辺でもよく植えられている。ある朝、その花に惹かれて顔を近づけると、一斉に虫が飛び立った。どうやら吸蜜のために虫が潜っていたようだ。

本日の掲句は、その時の様子を詠んだ句である。花の少ないこの時期、冬を越す虫たちにとっては、格好の食事処のなのだろう。「花八手(はなやつで)」は、「八つ手の花」のことで冬の季語。

イメージ 2因みに、「花八つ手」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。

    【関連句】
           ①  たなごころころげてまるき花八つ手
     ②  妖しきや真白き玉の花八つ手

イメージ 3①は、花がニット帽のポンポンのように丸く、集合して咲いているのに着目して詠んだ。「たなごころ」は掌=手のひらのことで大きい葉の喩え。
②は、八つ手が開花し始め、雄蕊を伸ばしている真っ白な花を見て詠んだ句。「妖し」は、「神秘的な」「魅力的な」という意味。

イメージ 4八つ手は、ウコギ科ヤツデ属の常緑低木。原産地は日本で、本州の福島より南~沖縄まで広く分布している。

葉はやや厚手で光沢があり、掌状で5~11の奇数に裂けているが、8つに裂けているものはほとんど無い。名前の八は数が多いという意味で使われたとのこと。この大きな葉に着目し、「天狗の羽団扇(はうちわ)」という異名がある。

イメージ 5花期は11月~12月。面白いのは、同じ花でありながら、雄蕊が成熟する「雄性期(ゆうせいき)」と花弁と雄蕊が散って雌蕊だけが伸びる「雌性期(しせいき)」があるということ。

雄性期の花は、白い花弁と雄蕊が美しく、ふんわりとした姿になる。しかし、雌性期の花は、坊主頭に毛が生えた感じになり、少々ごつごつした感じになる。

イメージ 6「花八つ(ツ)手」を詠んだ句は多く、これまで何句か参考句として掲載したことがあるが、以下にはそれ以外のものを掲載した。同義の「八(つ)手咲く」「八つ手散る」も含む。

    【花八(つ、ツ)手の参考句】
     写真師のたつきひそかに花八つ手   (飯田蛇笏)
     八つ手咲き仄めきそめし昴星      (相生垣瓜人)
     八ツ手散る楽譜の音符散るごとく    (竹下しづの女)
     みづからの光りをたのみ八ツ手咲く  (飯田龍太)
     八つ手咲き板塀が反る日向路      (高澤良一)

イメージ 7


Viewing all articles
Browse latest Browse all 1553

Trending Articles