■ 草むらは秋のまつりか神輿草
( くさむらは あきのまつりか みこしぐさ )
かくいう自分も、幼い頃に腹痛を起こし、祖母に「ゲンノショウコ」を煎じたものを飲まされた苦い記憶が幽かに残っている。
その「ゲンノショウコ」が薬草として知られ、「現の証拠」と漢字で書かれることについては数年前に知った。
名前は、この薬草を煎じて飲めば立ち所に薬効があらわれるということから付けられたそうだ。嘘みたいな本当の話である。
ところで、掲句には「神輿草(みこしぐさ)」は登場するが、何で「現の証拠」の話が出てくるのか訝しく思われた方もいるのではないだろうか。
実は、「神輿草」とは「現の証拠」の別称なのである。果実から種が飛び出た後にできるものが神輿に非常に似ているということで、この名がついたとのこと。
百聞は一見に如かず。上下の写真をご覧いただければ、そのことが十分納得いただけると思う。
前書きがかなり長くなったが、本日の掲句は、先日この「現の証拠」が群生しているところへ行き、「神輿」が出始めてきているのを見て詠んだ句である。上五の「草むら」は「草の村」を想起させるために使用した。
尚、「現の証拠」の花は夏の季語なので、中七に「秋のまつり」という秋の季語をおいて秋の句とした。
*左側が果実。右側は種子がはじけた後の状態
因みに、「現の証拠」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。果実でなく、いずれも花を見て詠んだもの。
【関連句】
① 優しさの現の証拠か花一輪
② 暗がりに現の証拠を見つけたり
①は、現の証拠の花が、駐車場の草むらに一輪だけ咲いているのを見て詠んだ句。
②は、昨年東京都で発生した「豊洲市場問題」にかけて詠んだ句。暗がりに光が当たれば、新たな証拠が見つかるだろうという希望的観測を込めた。(その後の展開はあっけなかった。)
現の証拠は、フウロソウ科フウロソウ属の多年草。花期は7月~9月。花は五弁で1~2cmと小さい。色は紅紫色または白紫色。(紅紫色は西日本、白紫色は東日本に多い。)別名で、「医者いらず」「忽ち草(たちまちそう)」とも言う。
「神輿草」で詠んだ句はほとんどなく、以下には「現の証拠」(花)を詠んだ句をいくつか掲載した。
【現の証拠の参考句】
うちかがみげんのしょうこの花を見る (高浜虚子)
しじみ蝶とまりてげんのしようこかな (森澄雄)
通り雨ありたる現の証拠かな (右城暮石)
謎などはもたざり現の証拠の花 (河合凱夫)
現の証拠の花と呼ばれてももいろに (辻桃子)
*花と果実が同居。果実がはじける前の状態。