■ コスモスの揺らぎ止まざる地球かな
( こすもすの ゆらぎやまざる ちきゅうかな )
そこで、もう少し山手の方のスポットに行ってみた。ここは日当たりが良いせいか、ほぼ満開になっていて時々吹く川風に揺れていた。
本日の掲句は、そんな様子を見ながら詠んだ句だが、最初に詠んだのは以下の句である。「コスモス」は秋の季語。
コスモスの花揺れ止まぬ川辺かな
この句も、写生句としては悪くないが、その句を元に少し捻って作ったのが掲句である。
周知のとおり、コスモス(cosmos)という言葉は、ギリシア語の"kosmos"から来ており、「秩序」「調和」を意味する。それが更に、「秩序整然とした統一体としての宇宙、または世界」を意味するようになったとのこと。
植物の「コスモス」の名は、語源は同じで、「秩序整然とした美しい花」ということでつけられたそうだ。
掲句は、そんな花を世界秩序に重ねて詠んでもので、何となく不安定な状況を「揺らぎ」と表現した。更に、下五に「地球」をおいて、単なる写生句とは違う意味合いを持たせた試作である。
余談だが、掲句では、この「揺らぎ」を「揺らぐこと」「動揺すること」の意味で使ったが、物理学では、以下の意味を持つとのこと。
「ゆらぎ」とは、広がりまたは強度を持つ量(エネルギー・密度・電圧など)の空間的
または時間的な平均値からの変動を指す。
何のことかさっぱり分からないが参考まで。
話は戻って、「秋桜」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① コスモスの平らに和む夢を見し
② 川べりに揺れてコスモス五六輪
③ コスモスの花百恵ともまさしとも
①は、コスモスの元の意味である「宇宙」「世界」と、花の姿から感じとれる「平和」を結び付けて詠んだ句である。
②は、川べりに植えてある数本のコスモスが、白とピンクの花を咲かせているのを見て詠んだ句。コスモス園とは違い、静かに数輪の花を咲かせているのも風情があって良い。
③は、コスモスを見ると思い出す歌「秋桜(コスモス)」にかけて詠んだ句。作詩作曲:さだまさし、唄:山口百恵、1977年リリース。
コスモス(秋桜)は、キク科コスモス属の一年草。メキシコ原産で日本には明治時代に渡来。花期は8月~10月。花色は、白、ピンク、赤色など様々。花弁の形が桜に似ているところから「あきざくら」と呼ばれ「秋桜」の字が当てられた。
コスモスを詠んだ句は非常に多いが、その内のいくつかを選んで以下に掲載した。(過去に掲載したものを除く。)
【コスモスの参考句】
コスモスに風ある日かな咲き殖ゆる (杉田久女)
晴天やコスモスの影撒きちらし (鈴木花蓑)
コスモスに冷たき雨の日なりけり (行方克己)
燈台のコスモス海になだれおつ (石原八束)
流転はじまる車窓のコスモスとは別に (高野ムツオ)