■ この花に凭れて飛ばん雁金草
( このはなに もたれてとばん かりがねそう )
花の形と言えば、大概の人は桜のような整ったものを思い浮かべるのではないだろうか。
しかし、中には何でこんな形になったのだろうと不思議に思う花も結構見かける。
今日、取り上げる「雁金草(かりがねそう)」もその一つで、何とも形容しがたい形をしている。
初めて、この花をまじまじと見た時に、何となく思い浮かんだのが、宇宙を遊泳する揺り椅子。
花弁を背もたれにし、上の2枚を頭に当て、横の2枚に手を置き、下の長い花弁に足を延ばす。
上に大きく飛び出し、湾曲した雄蕊と雌蕊は自由自在に動く照明灯や方向を感知するセンサーなど様々な役割を担う。
そんなことをイメージしながら、かつて以下の句を詠んだ。
宙に浮く揺り椅子のごと雁金草
今回は、この草花をもう少し違った角度から詠もうと思い、あれこれと検討したが、なかなか上句を超えれない。結局、無理やり作ったのが本日の掲句。
しかし、この句は上述のような説明がないと理解不能。とりあえずは、上句と対でご笑覧いただければと思う。尚、雁金草は季語ではないが、この時期に咲く花なので、夏もしくは秋の季語に準じるものとする。
雁金草は、クマツヅラ科カリガネソウ属の多年草。原産地は日本、朝鮮半島、中国など。全体に独特の強い臭気があり、切花には向かないとのこと。花期は7月~10月、花色は青紫色の一日花。
雄蕊と雌蕊(花柱)が長く飛び出しているのは、蜜を取りに来た花蜂などが花に飛びついた時に、その重みで花がしなり雄蕊の花粉を花蜂の背中に付け、更には花粉を花柱につけて受粉するため。よく考えられた形のようだが、一体誰が考えたのか?
名前は、花の形が 「雁(かり、がん)」「雁金(かりがね)」が空を飛ぶ姿に見立てたという説、雁の首に見立てたという説などがある。
別名に帆掛草(ほかけそう)があるが、この方は、花の形を帆掛船に見立ててつけられた。
余談だが、お茶の名前で「かりがね」というのがある。これは「雁が音」と書き、玉露や高級な煎茶の茶葉から作られた茎茶のこと。雁金草とは何の関係もない。