■ せせらぎに薄紅浮かべ秋明菊
( せせらぎに うすべにうかべ しゅうめいぎく )
それ以外で特に目を引いたのが、今日取り上げる「秋明菊(しゅうめいぎく)」。
実はこの花、9月の初め頃からぽつぽつと咲いていたのだが、今回行った時は丁度最盛期を迎えていて、沢山の株が薄紅の花を咲かせていた。
本日の掲句は、その様子を詠んだ句。秋明菊は、小川を挟むように両岸に植えてあって、清々しい小景を作っていた。「秋明菊」は秋の季語。
ところで、この秋明菊を知ったのは6年ほど前だが、その時見た花色はもっと濃いピンク色の花で、以下の句を詠んでいる。(下掲写真参照)
菊よりもコスモス似かな秋明菊
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このように、秋明菊には一重と八重があり、更に色もそれぞれに白、薄紅、ピンクなどがある。見たイメージもかなり違い、句を詠むにはそれなりの配慮を要する。
因みに、「秋明菊」は「貴船菊(きぶねぎく)」とも言い、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 不揃いの花弁も愛嬌秋明菊
② 白々と秋明菊や町の辻 *白々(しらしら)
③ 貴船菊面影違う一重八重
② 白々と秋明菊や町の辻 *白々(しらしら)
③ 貴船菊面影違う一重八重
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①は、一重のピンクの秋明菊を詠んだもの。二番目の写真を見て貰えば分かると思うが、花弁(実は萼片)の形、大きさは全く揃っていない。
②は、明け方に、近くの町の辻で、白い秋明菊を見て詠んだ句。白々とした明け方の感じと秋明菊の白を重ねて詠んでみた。
③は、花が一重と八重ではかなり面影=思い浮かべる顔や姿、印象が違うと詠んだもの。
秋明菊は、キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草。中国原産で、日本には、かなり古い時代に渡来したと言われている。
花期は9月~11月。花弁に見えるのは、実のところ萼(がく)片で、それ故か、形大きさが揃わない。花色は赤紫色が主だったが、交配によりピンク色、白色の品種ができたとのこと。
「秋明菊」の名は当初、可憐であり、この世の花とは思えない「黄泉の国の菊」という意味で「秋冥菊」と付けられたが、後に「冥」はイメージが悪いということでが「明」に変わったとのこと。
また、別称の「貴船菊」は、京都市の貴船という地域に多く咲いていたからというのが通説。
「秋明菊」「貴船菊」を詠んだ句は、それほど多くはないが、ネットで見つけたいくつかの句を以下に掲載した。
【秋明菊、貴船菊の参考句】
菊の香や垣の裾にも貴船菊 (水原秋櫻子)
去来忌やふふみそめたる貴船菊 (大島民郎)
名を聞きてよりしみじみと貴船菊 (片山由美子)
干傘が秋明菊をこぼしけり (高田洋子)
石積みて畑さゝへあり貴船菊 (甲賀 山村)
名を聞きてよりしみじみと貴船菊 (片山由美子)
干傘が秋明菊をこぼしけり (高田洋子)
石積みて畑さゝへあり貴船菊 (甲賀 山村)