■ 水引の綾に絡まる御所の裏
( みずひきの あやにからまる ごしょのうら )
京都御苑は年に何度も訪れるが、その主な目的は、京都御所などの施設を囲んだ裏地に生育している植物を観察すること。
広大な敷地には松などの植物がたくさん植えてあり、非常によく整備されているが、裏地には、何か所か自然のまま放置された草地がある。
今回行った時は、先日紹介した盗人萩(ぬすびとはぎ)や藪茗荷(やぶみょうが)などが繁茂していたが、その他で特に目を引いたのが、今日取り上げる水引草(みずひきそう)。
水引草の名前は、水引の飾り紐に似た植物だということでつけられたそうだが、その茎が綾をなして絡まりながら、小さい花を沢山付けているのが印象的だった。
【綾】物の表面に現れたいろいろの形・色彩。模様。特に、線が斜めに交わった模様。
本日の掲句は、そんな光景を見てを詠んだ句である。「水引草は単に「水引」とも言い秋の季語。
余談だが、「紅白水引」というと、正式には皇室の祝い事のみに用いられるもので、一般人が使うものは「赤白水引」というそうだ。だから、「紅白水引」というのは誤用。もっとも最近は、そんなことを気にする人は少ないと思うが。
因みに、水引(草)に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 赤白の小花ゆかしき水引草
② この頃は黒白多き水引草
①は、花の姿をそのまま詠んだ句。
②は、近頃、赤白水引を使うことがほとんどなくなり、黒白水引を使うことが多くなったと詠んだもの。
水引(草)は、タデ科ミズヒキ属の多年草。原産地は日本、中国、インドなど。花期は8月初旬から10月初旬。花は、米粒半分ほどの大きさで、上から見ると赤く見え、下から見ると白く見える。
咲き初めはまばらで、花が咲いていても気づかないほどだが、茎全体に花が咲き揃い幾重にも重なりだすと、赤白の網の目のようになり、少し華やいだ感じになる。
尚、先般取り上げた「金水引(きんみずひき)」は、バラ科キンミズヒキ属の多年草で水引(草)とは別科別属の植物である。(最後の写真参照)
水引(草)を詠んだ句はままあり、以下には、その中から幾つか選んで掲載した。(過去に掲載したものを除く。)
【水引(草)参考句】
水引のまとふべき風いでにけり (木下夕爾)
水引に滝のしぶきと深山露 (大野林火)
水引の紅ひとすぢのつゆげしき (松村蒼石)
水引をひそかに蟻の往来かな (会津八一)
水引の花に順ふ雫かな (佐々木六戈)
▼水引草と金水引(右側)