■ 日暮れ前いい塩梅に酔芙蓉
( ひぐれまえ いいあんばいに すいふよう )
この芙蓉は、朝方に白い花を咲かすが、昼前から薄紅(ピンク色)を帯び、昼過ぎからそれが濃くなって、日暮れ前の4時ぐらいには濃い紅色に変色する。
そのことが、人が酒を飲んで酔うほどに、顔を赤らめる様子に似ているということで「酔」が付けられた。
ところで、この酔芙蓉が最も美しいのはどの時間帯だろうか。
朝方見れば、白芙蓉と変わらない。夕方近くに見れば紅芙蓉に見える。だから、酔芙蓉独自の美しさは2時から4時ぐらいに顕現すると言って良いだろう。
本日の掲句は、そんなことをつらつら考えながら詠んだ句である。日暮れ前の花は、白から紅に変化する過程にあり、色の濃淡がなかなかいい塩梅(あんばい)なのである。「酔芙蓉」は秋の季語。
*塩梅:料理の味加減。それが転じて物事の具合、様子、加減。
尚、写真は最後のものを除き、2時から4時ごろに撮影したものを選んで掲載した。
因みに、「酔芙蓉」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① ふわふわと少し遅れて酔芙蓉
② 人の生酔うて終えたし酔芙蓉
③ 昨日の夢を残しつ酔芙蓉
①は、酔芙蓉が通常の芙蓉よりも遅れて咲くことに着目し、多分酔うたせいで遅れて咲いたんだろうと詠んだもの。
②は、「花の生酔うて終わるか酔芙蓉」の対句。人生も酔芙蓉にあやかって酔うて終えたいものだというのが句意。
③は、朝方に酔芙蓉を見ると、白い花の周辺に、紅く萎んだ前日の花が必ず残っており、そのことを「昨日の夢」として詠んだもの。(最後の写真参照)
酔芙蓉は、芙蓉の変種であり、既述の通り、朝の咲き初めは白色、昼は薄いピンク、夕方は紅色に変化する。八重咲きが多いが一重のものもある。
「酔芙蓉」の句はままあり、過去にもいくつか紹介したことがあるが、以下では、それ以外のものを掲載した。
【酔芙蓉の参考句】
ロゼといふ色に出でたる酔芙蓉 (後藤比奈夫)
はなびらを風にたゝまれ酔芙蓉 (川崎展宏)
はなびらを風にたゝまれ酔芙蓉 (川崎展宏)
恥らひの色を見せけり酔芙蓉 (高澤良一)
夜来の雨払ひて今朝の酔芙蓉 (長谷部菊江)
酔芙蓉正午の彩となつてゐし (高村美智子)
夜来の雨払ひて今朝の酔芙蓉 (長谷部菊江)
酔芙蓉正午の彩となつてゐし (高村美智子)
↓参考:午前9時ごろ
▼▼