■ 隣家より忍び込みたる貧乏蔓
( りんかより しのびこみたる びんぼうかずら )
今
日取り上げる「貧乏蔓(びんぼうかずら)
」というのは、一般的には「薮枯らし(やぶからし)」と言われている。
*貧乏蔓は「びんぼうづる」とも読む。
花は至って地味なので、恐らく、そんな草花は見たことがないという人が多いと思うが、近辺を見渡せばいろいろなところに生育している。
薮枯らしの名前の通り、藪があるところでは、蔓を伸ばして他の植物に覆いかぶさるようにして繁茂し、その植物を枯らしてしまうと言われている。
また、藪のないところでも、フェンスなどに絡まって繁茂しているのを時々見かける。
別称の貧乏蔓は、「庭の手入れどころではない貧乏な人の住処に生い茂る」、あるいは「この植物に絡まれた家屋が貧相に見える」などの意味を込めて、そう呼ばれるようになったとのこと。
本日の掲句は、その薮枯らし=貧乏蔓が、隣家から忍び込むように蔓を伸ばし、花を咲かせている様子を見て詠んだ句である。
実は、隣家はずっと空き家になっていて、草も伸び放題になっている。薮枯らしは、この時期になると年々蔓を伸ばし侵入してくる。
尚、薮枯らし(貧乏蔓)は、今頃から花を咲かす植物だが、季語としては秋に分類されている。従って、掲句は秋の句として残しておきたい。
【関連句】
① 薮枯らし面(つら)はいかにも薮枯らし
② 薮枯らし足長蜂が護衛とは
③ 薮枯らし蝶や蜂には人気者
②は、我が小庭に侵入しようとしている「薮枯らし」を取り除こうとしたら、足長蜂(あしながばち)が沢山群がっていて取り除くことができなかったことを詠んだ。
③は、とても花には見えない薮枯らしの花に、蝶や蜂が群がっているのを見て詠んだ句。好かれるかどうかは、見かけだけではない。
朝に開花した時は、花弁と雄蕊が付いているが、それらは昼まで落ちてしまいローソク状の雌蕊だけが残る。それを支える「花盤」は蜜を湛え、オレンジ色からピンク色に変わる。この雌蕊と花盤が、とても可愛いという人もいる。
【薮(藪)枯らしの参考句】
かくれ逢ふごとくまた逢ふ藪からし (上田五千石 )
やぶからしの根の上にわが愛の家 (殿村菟絲子)
朱の點の花滲みきてやぶからし (八木林之介)
藪からし花の傍若無人かな (上田きよ)
雑草に掴まり立ちのやぶからし (高澤良一) *雑草(あらくさ)