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Channel: 写真・俳句ブログ:犬の散歩道
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忘れたきこと忘れられずに藪萱草

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■ 忘れたきこと忘れられずに藪萱草  
                                   ( わすれたきこと わすれられずに やぶかんぞう )

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我が散歩道で見かける紫陽花もやや色あせてきた。そんなおり、鮮やかな橙色の薮萱草(やぶかんぞう)の花をよく見かける。

この花の別名は忘れ草(わすれぐさ)と言うが、それを知ってから、その名が忘れられなくなった。

本日の掲句は、そんな花の名にかけて詠んだ句である。

人はそれぞれに、忘れたいこと、忘れたくないこと、忘れて欲しいこと、忘れて欲しくないことなど様々持っていると思うが、もっとも辛いのは忘れたいことが忘れられないことではないだろうか。

掲句は、そんなことをつらつら思いながら詠んだ句である。「藪萱草」は、「忘れ草」、「花萱草」ともいい夏の季語。

因みに、同じような心境を過去にも以下のように詠んでいる。

   【関連句】
    ① 悲しきを花に託して忘れ草
    ② 憂きことは川に流して忘れ草
    ③ 悔やむことばかり思い出す忘れ草


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①は、藪萱草=忘れ草だということを初めて知った時に詠んだ句。
②は、たまたま川沿いに咲いていた薮萱草を見て詠んだ句。
③は、最近ふと思い出すことが悔やむことばかりだということを詠んだもの。松尾芭蕉の「さまざまのこと思い出す桜かな」を参考に。


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藪萱草は、ユリ科ワスレグサ属の多年草。中国原産で有史前に日本に渡来。花期は7月~8月。 花は橙色で八重咲きの一日花。一重のものは野萱草(のかんぞう)という。

名前は、葉がカヤ(萓)に似ていることに由来する漢名「萓草」を音読みしたもの。「藪」は「野」よりも人家の近くにある事を表している。


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別名の「忘れ草」は、中国で、春先に萱草の若芽を食べると「憂いが晴れる」といわれ、「忘草」「忘憂草」と呼ばれていたことに由来する。

これがのちに、萱草の花を身につけたり見たりするだけで「憂いを忘れさせてくれる」という意味合いに変わっていったとのこと。


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「忘れ草」は、藪萱草だけでなく、野萱草、浜萱草など萱草全般について言われることもあり、和歌にもよく詠まれている。
以下には、「萱草」「忘れ草」で詠まれた句をいくつか参考まで掲載した。(過去に掲載したものを除く。)

   【萱草、忘れ草の参考句】
    萱草に雷遠き日かげかな  (正岡子規)
    萱草に立つ浪音や桂浜   (高木晴子)
    萱草や柱状節理軋むごと  (神尾季羊)
    萱草の一番花の大いなる  (江本如山)
    断崖に風の道あり花萱草  (田村恵子)


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