■ 悪なすび悪びれもせず咲く街路
( わるなすび わるびれもせず さく がいろ )
実は、昨年も同じ所でこの花を見たのだが、悪びれもせず今年も堂々と花を咲かせているなと感心した。
本日の掲句は、そんな悪茄子の花の印象を詠んだ句である。当然ながら、悪茄子は、何か悪いことをしているなんて思っていないとは思うが・・・。
尚、悪茄子は季語になっていないが、茄子が夏の季語なのでそれに準じて使用した。
ところで、この草花になぜ「悪茄子」という名がついたかというと、茄子の仲間だが、繁殖力が強く一度生えると駆除するのが大変だからだそうだ。
除草剤は効きにくく、葉や茎に鋭い棘があるので草取りも大変。まさに農家や園芸家にとっては大敵の植物なので「悪」がつけられたとのこと。
命名者は有名な植物学者の牧野富太郎氏。彼がつけた面白い植物名には、「犬ふぐり」「野襤褸菊(のぼろぎ)」「掃溜菊(はきだめぎく)」などがある。
話は戻って、「悪茄子」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 悪茄子そんなに悪とは思えんが *悪(わる)
② 悪なりに生きろとばかり悪茄子
③ 可愛げに咲くや街路の悪なすび
①は、悪茄子を初めて見た時の印象を詠んだもの。
②は、周りから「悪」と罵られようが逞しく生きている様子を見て、「(悪は)悪なりに生きろ」というメッセージを感じ取り詠んだもの。
③は、昨年詠んだ句で、掲句と同じ場所で詠んだもの。悪茄子もよく見れば、可愛げがある。
悪茄子は、ナス科ナス属の多年草。原産地は北アメリカ。日本には昭和時代に渡来し帰化した。花期は6月~10月と長い。花は白または淡青色でナスやジャガイモの花に似ている。
果実は球形で、トマトに似ており黄色く熟す。しかし、草全体にソラニンを含み有毒であるため、家畜が食べると場合によっては中毒死することがあるとのこと。
別名は鬼茄子(おになすび)。英語でも"Apple of Sodom"(ソドムのリンゴ)、"Devil's tomato" (悪魔のトマト)などという悪名で呼ばれているとのこと。
「悪茄子」を詠んだ句はほとんどないが、ネットでたまたま見つけたものを参考まで以下に掲載する。
【悪茄子の花の参考句】
鎌持ってそれぞと指せる悪なすび (高澤良一)
悪茄子頓着せずに花盛り (太田土男)
悪茄子頓着せずに花盛り (太田土男)