■ どくだみは毒か薬か背戸の道
( どくだみは どくかくすりか せどのみち )
名前が文字通り毒々しいので、誰もが直ぐに覚えたのではないかと思うが、何故、その名がつけられたのか。
その由来には、葉に特有の臭気があるために、何かの毒が入っているのでは、ということで、「毒溜め(どくだめ)」と呼ばれ、それが転訛したという説がある。
その一方で、漢方薬として様々な効用があり、「毒を矯(た)める・止める」という意味を持つという説などがある。
そして、他の植物を十種類もあわせたくらいの薬効があることから、生薬名を「十薬(じゅうやく)」といい、その漢字が当てられたとのこと。
本日の掲句は、そのことを念頭に置いて詠んだ句。「どくだみ」「十薬」は夏の季語。
十薬(どくだみ)は、名前からして少し不気味だが、葉の色形(ハートというよりもスペード)や匂いなど、何か怪しい雰囲気を漂わせている。
それ故、あまり好まれる花ではないが、どんなに疎まれ摘まれても、生き続ける底知れぬ強さを感じさせる、真に奇妙な植物ではある。
因みに「十薬(どくだみ)」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。漢字の「十薬」は、「薬」の文字が気になり、今のところほとんど使っていない。
【関連句】
① どくだみの毒にて守る古き家
② どくだみのあやしさ醸す美白かな
③ どくだみの戸口を鎖す廃家かな *鎖す(とざす)
①は、十薬の花が古い家の周りに咲いているのを見て、十薬の毒で家を守っているのだろうと詠んだ句。
②は、スペード型の少しくすんだ緑葉の上に咲く十薬の花の白さが、妖しげな美しさを醸していることを詠んだもの。
③は、十薬が廃家(はいか)の入り口を鎖す(とざす)ように繁茂しているのを見て詠んだ句。特に十薬の繁殖力の強さに注目して詠んだ。
十薬(どくだみ)は、ドクダミ科ドクダミ属の多年草で原産は東アジア。花期は5~7月頃。花は、混じりけのない純白だが、花弁らしきものは、蕾を包む苞(ほう)で、中心にある薄緑色の花柱らしきものが本当の花に当たる。
「十薬」「どくだみ」を詠んだ句は非常に多く、以下には、その中からいくつか選んで掲載した。(過去に掲載したものを除く。)
【十薬、どくだみの参考句】
吹かれゆがめり十薬の十文字 (行方克己)
十薬の臭ひに噎せる一会かな (中村苑子)
十薬を揺すぶり去りし夕蛾かな (中村汀女)
十薬の花敷きつめて泣き羅漢 (橋本榮治)
十薬の花ひつぱつて蜘蛛の絲 (星野立子)
*八重の十薬