■ 屋久島の万緑を裂く古滝かな
( やくしまの ばんりょくをさく こたきかな )
▼大川の滝
近くの種子島が細長く平らかであるが、この島は丸くて高低差が大きく、宮之浦岳など2000m近い山々が中央部に聳えている。
それ故、豊かで美しい自然が形成され、植物の種類が非常に多いことでも知られており、1993年にユネスコ世界遺産に登録された。
昨日は、その中でも特に有名な屋久島の森を取り上げたが、その森を少し抜けて山々を見ると一面を覆う若葉の緑が眩しく目に飛び込んでくる。
本日の掲句は、そんな緑一色の景を裂くように流れる滝を見て詠んだ句である。「万緑」「滝」は共に夏の季語で本句は季重なりの句。
屋久島には、140以上の滝が流れているそうだが、大川の滝(たいこのたき)、千尋の滝(せんぴろのたき)が特に有名。(写真参照)
▼大川の滝
因みに、「滝」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 春の陽を浴びて奈落へ華厳瀧
② 岩の道跳べば忍者や赤目滝
③ 冬日さす白妙の衣那智の滝
① 春の陽を浴びて奈落へ華厳瀧
② 岩の道跳べば忍者や赤目滝
③ 冬日さす白妙の衣那智の滝
▼大川の滝
①は、栃木県日光市の「華厳(けごん)の滝」を見て詠んだ句である。春とはいえ、まだ枯木がほとんどで、非常に寂漠としていた。水が滝壺に向かって真っ直ぐに落ちる姿は印象的だった。
②は、三重県名張市の「赤目(あかめ)四十八滝」を訪れた時に詠んだ句。この地は伊賀忍者の里で、多くの忍者がここで修業したと言われていることから、中七に「忍者」を入れた。
③は、和歌山県那智勝浦町の「那智(なち)の滝」を見て詠んだ句。滝の印象を断崖にかかった「白妙の衣(きぬ)」に喩えて詠んだ。おりしも当日は晴天で、冬の薄日が滝を照らし神々しく感じた。
▼千尋の滝
「滝」を詠んだ句は非常に多い。以下には、参考になりそうなものをいくつか選んで掲載した。(過去に掲載したものを除く。)
【滝の参考句】
石楠花にかくれ二の滝三の滝 (宮下翠舟)
滝みつめ総身滝の白さ満つ (岡田日郎)
十月の滝しろがねに轟けり (玉川鴦鳴)
山雀の声が滝吹く谷伝ひ (臼田亜浪) *山雀(やまがら)
滝浴びの童子の言葉谿に澄む (河野南畦)
▼千尋の滝
【付録】
屋久島に棲む動物では、ヤクシカとヤクザルが有名である。バスで移動中、車窓より何度もその姿を見た。以下にその証拠写真を掲載する。
屋久島に棲む動物では、ヤクシカとヤクザルが有名である。バスで移動中、車窓より何度もその姿を見た。以下にその証拠写真を掲載する。
▼ヤクシカ:ニホンシカの亜種で小型。
▼ヤクザル:ニホンザルの亜種で小型。
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