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Channel: 写真・俳句ブログ:犬の散歩道
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秋空に大口開けてトレニアそ~

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■ 秋空に大口開けてトレニアそ~
                    ( あきぞらに おおぐちあけて とれにあそ~ )
 
花を見た時の最初の印象は、意外と忘れがたく、それがその後の句作りに大きな影響を与えることがある。

イメージ 1今日紹介する「トレニア」も、数年前に道脇に咲いているのを見た時に、まるで幼い子供が大きな口を開けて歌っているように見えた。その時の印象を詠んだのが以下の句である。尚、トレニアは季語でないので、この句は無季となる。

 トレニアのるんるんとしてあどけなき

次に作ったのは一年後で、今度は、歌を歌っている感じをそのまま詠み、中七は「ドレミファソラシ」をもじって「トレニアそらし」とした。また、季語は幼稚園などをイメージし「秋の園」を入れた。

 声合わせ トレニアそらし秋の園

それ以降、トレニアについては、なかなか新しい趣向が湧いてこなかったので2年程放置したが、今回再度挑戦してみた。その結果できたのが掲句である。見ての通り、前回のものを少し変えた感じになった。果たしてこれが前のものより良いのかどうか分からないが、その判定は、また1年後にでもしてみたい。

ところで、俳句の作り方は人それぞれだが、その一つに「多作多捨」というのがある。できるだけ多く詠んで、駄句は捨て良いものを残すというやり方である。しかしこの方法は、どうも自分の性格に合わず、今のところ1題1句、1日1句(平均)を原則としている。

また、完成させるまでは推敲に数日はかける。だから1日1句を完成させるのに常に5句から10句程の仕掛在庫を持つ。完成してブログなどに掲載した後は、1年ぐらい放置して、同じ場面に出くわした時に再検討し、場合によっては改作する。これが結構楽しみでもあり面白い。

果たして、このやり方がいいのかどうか。俳句をやっておられる方で、こういう作リ方(特に作句数など)をしているという意見などがあれば、ぜひコメント欄に記載いただければ幸いである。

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トレニアはゴマノハグサ科トレニア属の一年草または多年草。原産地は、東南アジア、アフリカなどで明治初期に渡来したそうだ。花色は豊富で、濃青色や淡青色、ピンク色、黄色などがある。花期は、5月~10月と長い。
 
トレニアという名前は、スェーデンの東インド会社に派遣されていた牧師「トレン(O.Toren)」の名前に因んだものだそうだ。和名に、夏菫(なつすみれ)、花瓜草(はなうりぐさ)、蔓瓜草(つるうりぐさ)などがある。
 
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高塀を越えて房垂る山牛蒡

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■ 高塀を越えて房垂る山牛蒡
              ( たかべいを こえてふさたる やまごぼう )
 
最近、いつも通る道沿いの家の高塀から、赤紫色の小さな実を葡萄の房のように垂らしている植物を見かける。名前は、「洋種山牛蒡(ようしゅやまごぼう)」という。在来種の「山牛蒡」と区別するため少し長たらしい名前になったようだ。
 
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この山牛蒡、とにかく繁殖力、成長力が強い植物で、一度根付くと葉を一杯に広げながら、高さ約2メートルぐらいまで成長するそうだ。それが、堂々と高塀を越えて実を垂らしているとは。本日の掲句は、そんな様子を驚きをもって詠んだ句である。
 
「山牛蒡の実」が季語になっているかどうかは定かでないが、秋の季語に準じて使用した。尚、「山牛蒡の花」は夏の季語になっている。また、単に「山牛蒡」とすると別種の食用のものをさし冬の季語になるが、音数の関係で「洋種山牛蒡」を「山牛蒡」と短縮した。
 
因みに山牛蒡については、過去には以下の句を詠んでいる。
 
【関連句】
 ①  奇っ怪な実は太古より山牛蒡
 ②  山牛蒡大胆不敵に結実す
 ③  図太きは我が取柄なり山牛蒡
 
 
①は、山牛蒡の実の奇怪さを詠んだもの。多分、太古の昔の姿そのままに、今日までしぶとく、ふてぶてしく生き残ってきたのだろうと思う。②は、所を選ばす大胆に生長し結実する姿を詠んだ。③は、自分もこの山牛蒡にあやかって、図太く生きたいものだという願いをこめて詠んだもの。
 
 
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洋種山牛蒡は、ヤマゴボウ科ヤマゴボウ属の多年草。原産地は北アメリカで明治初期に渡来。6月~7月頃に淡紅色の花をつけ、8月~10月頃に濃紫色のブドウを小さくしたような実をつける。この実を潰すと真赤な汁が出ることからインクベリーとも呼ばれている。
 
尚、食用の「山ごぼう」は菊科の植物で根は食べられるが、この「やまごぼう」は全体が有毒で、食べると嘔吐や下痢を起こすそうなので気を付けたい。
 
山牛蒡を詠んだ句は、ほとんどないので参考句は割愛する。
 
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かの昔馬に食われし木槿咲く

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■ かの昔馬に食われし木槿咲く
                       ( かのむかし うまにくわれし むくげさく )
 
木槿(むくげ)の花は、6月の終わり頃から咲きだし、今も花の勢力は衰えることなく咲いている。季語としては秋なので、句を作るのを立秋が過ぎるまで待ったが、これまで何句も作っていることもあり、新しい趣向のものがなかなかできなかった。

イメージ 1本日の掲句は、そんな中、芭蕉の以下の句を思い出して、少々苦し紛れに詠んだ句である。

道のべの木槿は馬に食はれけり 
 松尾芭蕉41歳1684年作「野ざらし紀行」より

芭蕉がいた昔は、人を乗せた馬が普通に道を歩いていて、道の辺の木槿も食べたようだが、その木槿も今は食べられる心配もなく咲き誇っているというのが句意である。

ところで、引用の芭蕉の句は、一般的に最高傑作の一つと言われているが、その評価にはいろいろなものがある。その代表的なものとしてよく引用されるのが、山本健吉の著書「芭蕉」での評釈。それを要約すると以下のようになる。

「芭蕉は馬の上で、道ばたの白い木槿の花を目にした。段々近づいて眼前間近になって、意識外にあった馬の首が入ってきて、木槿の花を喰ってしまった。この句の面白さは、単なる写生句としてでなく、馬上の芭蕉の軽い驚きが現わされているところにある。」

その一方で、正岡子規は、俳論「芭蕉雑談」の中で酷評する。これもかなり端折って要約すると以下のようになる。

 「この句は、ことさらに『木槿』が『喰はれ』と受動詞を用いたる処は、重きを木槿に置きて多少の理屈を示したるものと見るべし。これは、「出る杭は打たれる(木槿が道ばたに花を咲かせれば、馬に喰われる)」という戒めを込めた句であると考えられ、文学上最下等に位する。」
 
子規は、美的感覚に重きを置き、小理屈の句を月並みとして、ことさら嫌っていた。

名句には、意外と単純明快な句が多く、何でこの句が名句なのかと疑問に思われるものも結構多い。それだけに解釈も真逆になることもままある。自分としては、あまり深読みせず、今のところは山本評を支持したい。

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因みに、過去に木槿を詠んだ句で比較的ましなものをいくつか以下に掲載する。

    【関連句】
     ① 咲きて散り命をつなぐ木槿かな  
     ② チャングムの誓いの花か紅むくげ
     ③ しろむくのむくのむすめやしろむくげ
 
①は、咲いては一日で散り、また新たに咲く木槿の生き様を詠んだ句。②は、韓流ドラマ「チャングムの誓い」に登場する紅のチョゴリにかけて詠んだ句。木槿は韓国の国花。③は、白木槿を白無垢の衣装を着た娘さんに重ねて詠んだ語呂合わせの句。

木槿は、アオイ科フヨウ属の落葉低木で、「芙蓉(ふよう)」 「ハイビスカス」などと同じ仲間。中国、インド原産で日本には奈良(もしくは平安)時代に渡来したと言われている。花期は、6月~10月と非常に長い。
 
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禁断の無花果の実や食べまほし

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■ 禁断の無花果の実や食べまほし
                           ( きんだんの いちじくのみや たべまほし )
 
何時の間にか夏が過ぎ、しとしとと秋雨が続く今日この頃である。そんな中でも、近所の無花果の実は熟れてきて、緑色から暗紫色に変色し、近くへ寄ると甘酢っぱい匂いがする。

イメージ 1本日の掲句はそんな無花果を見て詠んだ句。上五の「禁断の」については後述するとして、実にうまそうに熟れているが、他所の家のものなので捥ぎ取る訳にはいかず、そっと写真を撮るだけにした。「無花果」は秋の季語。*まほし=したい。

さて、「禁断の果実」についてだが、ご承知の通り、これは旧約聖書『創世記』に登場する。その果実とは何か。答は林檎(りんご)とばかり思っていたのだが、聖書には明確に記載されておらず、ユダヤ人やイタリヤ人などは無花果だと言っているそうだ。

アダムとイブが果実を食べた後、恥ずかしさのあまり局部を隠したのが無花果の葉だったことからすれば、この説は十分納得できる。しかも、無花果の方が林檎よりも何となく神秘的な感じがする。

そのことを知った上で、掲句では「禁断の無花果の実」とし、少々想像を掻き立てる句として試みに作ってみた。

因みに無花果に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。

    【関連句】
     ① 無花果の花は実の中甘い花
     ② 無花果のとろりと甘き実りかな

①は、無花果の花の仕組みを知り詠んだ句。イチジクは漢字で無花果と書き、花を咲かせず実がなると思われているが、実際は外からは見えないだけで花嚢(かのう)=実の内側に花はちゃんとある。②は、無花果の実りの様子を詠んだもの。

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無花果は、クワ科イチジク属の落葉高木。原産地はアラビア南部。日本には、江戸時代初期に渡来。名前は、「一月で熟す」もしくは「毎日1個ずつ熟す」といことで「一熟」となり、それが変化して「いちじく」になったそうだ。(諸説あり)
 
余談だが、名字に「九」というのがあり、一文字で九だから、「いちじく」と読むそうだ。
 
    【無花果の参考句】
     いちじくをもぐ手に伝ふ雨雫         (高浜虚子)
     無花果のゆたかに実る水の上        (山口誓子)
     いちじくのけふの実二つたべにけり     (日野草城)
     無花果をよく色付けて雨上がり       (大石子羊)
     無花果が落ちて来そうに立ち止まり    (中島軍次)
 
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お盆過ぎ耳につくつくつくつく法師

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■ お盆過ぎ耳につくつくつくつく法師
            ( おぼんすぎ みみにつくつく つくつくしぼうし )
 
もう9月。お盆の五山送り火を見てからもう2週間以上たった。今年は例年よりも涼しいせいか、何か時の経過が早いような気がする。あれだけ喧しかった蝉時雨の声も今はほとんど聞かなくなり、法師蝉の声が時折耳に付く。

イメージ 1本日の掲句は、そんな様子を詠んだ句である。中七と下五では「つくつく」を繰り返し調子を求めた。また、下五については、「つくつくし」としてもよかったが、上五の「お盆」との関連で、「つくつく法師」とあえて字余りにした。「つくつく法師」は、「法師蝉」「つくつくし」ともいい、秋の季語になっている。

因みに、法師蝉に関しては、過去に以下の句を詠んだ。

【関連句】
 ① 遅がけに忙しなく鳴く法師蝉
 ② 法師蝉もういいようと鳴き止みぬ

他の蝉とは違って、法師蝉は、時期的に遅くから鳴きだし、非常に忙(せわ)しなく鳴く。そんな様子を詠んだのが①の句である。②は、法師蝉が最初に「ツクツクボウシ」を10数回繰り返し、その後「モウイイヨ」と3~4回ほど繰り返して鳴き終わる様子を詠んだ。

動物の鳴き声は人によって聞こえ方が違うようだが、覚えやすいように、人間の言葉、時には意味のある言語の言葉やフレーズに当てはめたりすることがある。これを「聞きなし(ききなし)」というそうだ。

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ところで、この蝉の呼称は、俳句では法師蝉が一般的だが、生物学では「ツクツクボウシ」が正式。セミ科の昆虫で体長は翅(はね)の先まで約4.5センチ、暗黄緑色の地に黒紋があり、背にW形の紋を持つ。

成虫は7月から発生するが、この頃はまだ数が少なく、鳴き声も他のセミにかき消されて目立たない。しかし他のセミが少なくなる8月下旬から9月上旬頃には鳴き声が際立つようになる。そして、9月下旬頃にはほとんどいなくなる。
 
特徴のある蝉のせいか、法師蝉を詠んだ句は非常に多い。その中で比較的わかりやすい句を以下に掲載する。
 
    【法師蝉の参考句】
     また微熱つくつく法師もう黙れ     (川端茅舎)
     法師蝉耳に離れし夕餉かな       (阿波野青畝)
     真昼かな浮かれ法師の法師蝉     (林翔)
     日をまとふ森の暗さよ法師蝉     ( 阿部ひろし)
     法師蝉矛を収むるごとく止む      (大串章)
 
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番まつり瑠璃まつりとは賑々し

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■ 番まつり瑠璃まつりとは賑々し
                       ( ばんまつり るりまつりとは にぎにぎし )
 
先日ある公園にでかけた時に、番茉莉(ばんまつり)の花を見た。この花、5月頃に家の近くで見た花だが、まだ咲いているのかと思いながら歩いて行くと、今度は瑠璃茉莉(るりまつり)の花が咲いていた。
                                               (写真①:番茉莉)
イメージ 1まつり、まつりと賑やかだなと思いながら、ここで一句とばかり詠んだのか本日の掲句である。番茉莉も瑠璃茉莉も、何故か季語になっていないようだが、ここでは夏の季語に準じて使用した。

ところで、何故この花に茉莉(まつり)という名前が付いたのか調べてみると、和名で茉莉花(まつりか)というジャスミンの花があり、これに似ていることから付けられたそうだ。

それでは、茉莉花の茉莉とは何かというと、ジャスミンが、原産地のインドのベンガル語で「Mali」と呼ばれ、その当て字が中国語の「茉莉」。それが日本で「まつり」と読まれるようになったのではないかと考えられる。

ただ、面白いのは、以下に述べる通り、上記の植物の属する科が全て違うことである。だから、同じ名前がついていても同類と混同しないようにする必要がある。もっとも、そういうケースは他の植物でも時々見られるので注意したい。
 
●番茉莉(ばんまつり)
ナス科バンマツリ属の常緑低木。南アメリカ原産。明治末期に渡来。花の色は最初は紫だが、2~3日後には減色して白くなる。花期は5月~8月。品種では、匂番茉莉(においばんまつり)が人気で、ジャスミンのような香りがする。尚、名前の「番」は、外国のことを表すとのこと。(写真①)

●瑠璃茉莉(るりまつり)
イソマツ科ルリマツリ(プルンパゴ)属の半蔓性常緑小低木。南アフリカ原産。花期は5月~10月と長い。花は、水色のくっきりした高坏型の五弁花。白花もある。花名の瑠璃は、花の色から。別名、プルンパゴ。(写真②、③)
                                              (写真②:瑠璃茉莉)
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●茉莉花(まつりか)
モクセイ科ジャスミン(ソケイ)属の常緑半蔓性灌木。「ジャスミン」と呼ばれる植物の一種。インド、東南アジア地方原産。花期は3月~6月。白色または黄色の花を咲かせる。いくつかの種の花は強い芳香を持ち、香水やジャスミン茶の原料として使用される。別名「アラビア・ジャスミン」。(写真なし)
 
番茉莉、瑠璃茉莉は季語になっていないせいもあり、詠まれた句は少なく、参考句は割愛する。
 
                                                   (写真③:瑠璃茉莉)
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昼餉時フランクフルトのガマを見る

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■ 昼餉時フランクフルトのガマを見る
                             ( ひるげどき ふらんくふるとの がまをみる )
 
最近は、少し行動範囲を広げようと京都以外の植物園や公園に出かけているが、その一環で、先日は大阪の花博記念公園鶴見緑地へ行ってきた。この公園は、1990年にあった花の万博(花博)の跡地を活用したもので結構広い。

イメージ 1特に当てもないので、入口から案内図を見ながら、外側を左回りに歩いた。所々に花博に出展された各国の庭園跡が見られたが、時期的なこともあり、建物跡などはあっても目新しい花は見られない。

そうこうする内に、日本庭園に行き当たり、小じんまりとした池に、蒲の穂がたくさん立っているのを見た。蒲の穂は、写真などでは何度も見ているが実際に見たのは初めてである。

それが、祭の屋台で売られているフランクフルトソーセージとそっくりだと前々から思っていたが、実物はそれよりも幾分小さい。これなら200円は取れないだろうとつまらないことも考えながら詠んだのが本日の掲句。尚、「蒲」、「蒲の穂」は夏の季語なので本句は夏の句とする。「蒲の穂絮」であれば秋の季語。

蒲は、ガマ科ガマ属の多年草。6月~8月頃、茎を伸ばし、円柱形の茶色の穂をつける。これを蒲の穂と呼ぶが、穂の下部は、雌花の集まりで赤褐色で太く、既述の通りフランクフルトソーセージに似た形状である。穂の上部は雄花の集まりで細く、開花時には黄色い葯が一面に出る。

風媒花で、雄花も雌花も花びらなどはない。雌花は、結実後、綿クズのような冠毛を持つ微小な果実になる。この果実は風によって飛散し、水面に落ちると速やかに種子が実から放出されて水底に沈み、そこで発芽するそうだ。

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名前の由来は、この植物から蓆(むしろ)等を作るので 「クミ(組)」と呼ばれ、次第に「かま」になり「がま」となったとする説や、朝鮮語の 「カム(材料)」 から来た説等が有るが、真偽の程は不明である。別名に「御簾草(みすくさ)」などがある。
 
    【蒲の参考句】
     雨の輪も古きけしきや蒲の池        (高浜虚子)
     蒲の穂やはだしのままに子の育つ     (池内たけし)
     蒲の穂の並ぶ沼経て筑波山        (沢木欣一)
     蒲咲いて篠つくあめの中が見ゆ      (斎藤美規)
     野の川のゆるき流れや蒲の花        (廣瀬雅男)
 
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花虎の尾は昔からロリータ風

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■ 花虎の尾は昔からロリータ風
              ( はなとらの おは むかしから ろりーたふう )
 
先日、ある家の前の道路沿いで、長い花穂にピンクの小花をたくさんつけた、愛くるしい花を見かけた。花の名前は、「花虎の尾(はなとらのお)」という。この花姿、どこかで見たような感じだと前々から思っていたのだが、ふと思い出したのがロリータファッション。

イメージ 1かなり前のことだが、たまたま見たテレビで、最近の女の子のファッションについての特集があり、原宿、秋葉原などで着飾って歩いてる様子などが放映されていた。良い悪いは別として、こんなファッションが流行っているのかと少々驚いた。

本日の掲句は、その印象をベースに詠んだ句。花の色のピンクとフリルのようなふわふわとした感じがどこか似ている気がした。尚、俳句では「虎尾草」や「虎の尾」を夏の季語としているが、これは「岡虎の尾」のことで別の植物。「花虎の尾」の方は季語にはなっていないようだが、秋に咲く花なので秋の季語に準じて使った。

ところで、ロリータファッションと言っても、見たことがない人には全くイメージが湧かないと思うが、ネットで検索していただければ、画像がいくらでも出てくるので、興味のある方はご覧いただきたい。

事のついでに、その由来などについて少し整理をしようと思ったが、ファッションには疎く、とても説明できそうにないので、Wikipediaに記載された以下の説明を引用するにとどめる。

「ロリータ・ファッション (Lolita Fashion) とは、日本独自のファッションを中心としたムーブメントである。少女のあどけないかわいらしさ、小悪魔的な美しさを表現したスタイルであり、欧米文化への憧れと想像力をエンジンに、懐古的でありながらも全く新しい日本独自の解釈を加えた、ティーンを中心としたストリートファッションである。日本だけではなく、諸外国からも注目を集めている。」

余談だが、ロリータと言えば、ロリコン=ロリータコンプレックスという言葉を思い浮かべる人もいると思うが、これは、幼女・少女への性的嗜好や恋愛感情のことで、ロリータファッションとは全く関係ない。

因みに、花虎の尾については、過去に以下の句を詠んでいる。

    【関連句】
     ① 花虎の尾は付け根より咲きにける
     ② ぽにょぽにょと花虎の尾の並びたる

①は、花が花穂の下(花穂の付け根)の方から咲いていく様子を詠んだもの。②は、花の咲いている感じを、宮崎駿監督のアニメ映画「崖の上のポニョ」の歌に出てくるあの「ぽにょぽにょ」といいう擬態語で表現してみた。

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花虎の尾はシソ科ハナトラノオ属の多年草。北アメリカ原産で大正時代に渡来したそうだ。花期は、8月初めから9月末頃。花色にはピンクの他に白、赤紫などもある。別名に「角虎の尾(かくとらのお)」がある。

尚、花が沢山並んで、尾のような花穂になっているものを、昔から「虎の尾」と呼ぶ習慣があるそうで、他にも、「岡虎の尾」「伊吹虎の尾」「春虎の尾」「瑠璃虎の尾」などがある。但し、これらは、いずれも別科別属の花である。

花虎の尾は、季語になっていないせいもあり、詠まれた句がほとんどなく、参考句は割愛する。
 
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祭事終え仰ぐ空には望の月

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■ 祭事終え仰ぐ空には望の月
                 ( さいじおえ あおぐそらには もちのつき )
 
昨日は中秋の名月の日。ここ京都では、いくつもの寺社で観月祭、月見会が行われた。昨年は、植物園の月見会に行って、月を見ながら音楽を楽しんだが、今年は初めて、近くの下鴨神社(賀茂御祖神社)の名月管弦祭に行ってきた。

イメージ 15時半からの開催なので、少し早めに行ったが、会場の境内にはすでに沢山の人。開始時刻になり、まず、いろいろな型通りの神事が行われ、その後、境内の一画にある舞台で尺八、琴(筝曲)、琵琶、神楽、雅楽、舞楽などの芸能が奉納された。

時間は約2時間半。久しぶりに日本の伝統芸能をゆっくりと堪能した。月の方は、境内の樹木に遮られ見ることができなかったが、帰途につき、境内を少し出て空を仰ぎ見ると、真ん丸の月が皓皓と輝いて見えた。

本日の掲句は、そんな様子を読んだ句である。「望の月」は、「望月(もちづき)」と同義で満月のこと。特に陰暦十五夜の月をいう。また、曇りなく澄みわたった満月は、「明月」あるいは「名月」とも呼ぶ。これらはいずれも秋の季語になっている。

ところで、「中秋の名月」だが、これは陰暦8月15日(今年は9月8日)の十五夜の月を指し、「仲秋」でなく「秋の中日」の意で「中秋」と書く。また、この中秋の夜に雲などで月が隠れて見えないことを「無月(むげつ)」、雨が降ることを「雨月(うげつ)」とも呼ぶ。

更に、十五夜の前後をそれぞれ「待宵(まつよい)」「十六夜(いざよい)」と称し、翌月の陰暦9月13日を十三夜と言う。日本には、これを「後(のち)の月」と称して愛でる独自の風習がある。今年は、10月6日がその日に該当するとのこと。その他にも、様々な月の呼び名や風習があるようだが、これ以上触れるとボロが出そうなのでここにとどめる。

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因みに、過去に「中秋の名月」を詠んだ句としては以下の句がある。句中の「今日の月」「十五夜」「望の月」は、いずれも中秋の名月の別の言い方。

    【関連句】
     ① 今日の月何処で見てむ彼の人は  
*何処(いずこ)
     ② 十五夜は荒れ模様らし早月見
     ③ 虫すだく闇皓皓と望の月

①は、遠くにいる知人のことを思って詠んだ句。②は、天気予報で台風が来ることを知り、二日前の夜に早めの月見をした時の句。③は、「闇」に響く虫の音と皓皓と輝く月の「光」を対比させて詠んだ句。
 
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中秋の名月に関しては、以前「名月」を使った参考句を本ブログで掲載したが、今回は特に、「名月」を使ってない句を選んで掲載する。

     【中秋の名月の参考句】
       三井寺の門叩かばや今日の月      (松尾芭蕉)
       月今宵松にかへたるやどりかな     (与謝蕪村)
       雲こめて今日満月の薄あかり      (林翔)
       望の月探査衛星待つ如し         (松崎鉄之介)
       十五夜の醤油とくとく匂ひけり      (岡本眸)
 
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これがその現の証拠と咲きてあり

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■ これがその現の証拠と咲きてあり
             ( これがその げんのしょうこと さきてあり )
 
イメージ 1先日、久しぶりに京都御苑に行ってきた。ここは、江戸時代まで、京都御所を中心に宮家や公家の家が建ち並んでいた所だが、明治維新の東京遷都で、ほとんどの方が東京に引っ越され、のちに残された建物などが整備されて、広大な公園となった。

この公園には、松、桜、梅など様々な樹木が植えられ、多様で豊かな樹林が形成されている。また、様々な野草が自生している草地も広く残されている。本日の掲句は、その草地で「現の証拠(げんのしょうこ)」の花を見て詠んだ句である。

最近、東アジア界隈では「これが証拠だ」「それは捏造だ」など喧伝されているが、それにかけて、「現の証拠」はここに咲いているよと詠んでみた。ただ、本ブログでは、政治関連は極力扱わないことにしているので、これ以上は踏み込まない。尚、「現の証拠」は夏の季語なので、本句は夏の句として残す。

ところで、この「現の証拠」、何故こんな名前になったのかというと、腹痛を起こした時に煎じて飲めば、たちどころに薬効があらわれるということから付けられたそうだ。幼い頃、何度か飲まされた記憶があり、「ゲンノショウコ」と覚えていたが、数年前に、漢字で「現の証拠」と書くことを知った時は、一瞬、嘘だろうと思った。

因みに、現の証拠に関しては、過去に以下の一句だけ詠んだことがある。

       優しさの現の証拠か花一輪 

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ゲンノショウコ(現の証拠)は、フウロソウ科フウロソウ属の多年草。花期は7月~8月。花は五弁で、色は紅紫色または白紫色。(紅紫色は西日本、白紫色は東日本に多い。)「実」の形が、神輿の屋根の捲りあがった形の飾りにそっくりなので神輿草(みこしぐさ)とも呼ばれる。
 
 
     【現の証拠の参考句】
      うちかがみげんのしょうこの花を見る    (高浜虚子)
      殉難碑現の証拠の花は欠く            (阿波野青畝)
      しじみ蝶とまりてげんのしようこかな      (森澄雄)
      猫の子にゲンノショウコの花開く       (青柳志解樹)
      陶器屋にげんのしょうこの逆さ吊り      (谷中隆子)
 
 
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花野にて狐の孫を踏みにけり

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■ 花野にて狐の孫を踏みにけり
                   ( はなのにて きつねのまごを ふみにけり )
 
昨日は現の証拠という野草を紹介したが、実は、その花に混ざって、「狐の孫(きつねのまご)」という野草が所々に咲いていた。この花は、現の証拠よりも更に小さく、米粒よりも少し大きい花だが、見過ごしてうっかり踏んでしまった。イメージ 3

本日の掲句は、そのことを詠んだ句である。狐の孫が植物の名前だと知らない人は、何と残酷なことを。動物虐待ではないかと思われたかもしれないが、幸いなことに、踏まれながらも何とか自力で立ち上がった。

尚、「狐の孫」は、季語になっていないので、掲句では、上五に秋の季語「花野(はなの)」をおいた。花野とは、萩、薄、野菊など秋の草花が咲き乱れている野原のことをいい、華やぐ春の野原に比べ、ものの憐れさを感じさせる。

ところで、何故、狐の孫という名前がついたのか。定説ではないが、花穂が狐のしっぽに似ていて、花の形が子狐の顔に似ているからだそうだ。そう言われれば似てなくもないが、何故「子」でなく「孫」なのか。依然謎は残る。

因みに、狐の孫に関しては、過去に、以下の句を詠んでいる。尚、これら句では、狐の孫を秋の季語に準じて使用している。

           【関連句】
              ① 狐の孫よおめえの母ちゃんどこぞいる
              ② これはこれは狐の孫ではないかいな

①は、狐の孫だというので、母(かあ)ちゃんはどこかと聞いた句。当然ながら返答はなかった。②は、狐の孫に思いがけなく出会った時のちょっとした驚きを詠んだ句である。

イメージ 1
 
キツネノマゴ(狐の孫)は、キツネノマゴ科キツネノマゴ属の一年草。原産地は日本、中国など。花期は7月~10月で、枝の先に穂状の花序をつけ、淡紅紫色の唇形の花をつける。花の種類には、白い花をつける「シロバナキツネノマゴ」、花がより小さい「キツネノヒマゴ」などがあるとのこと。別名に、「カグラソウ(神楽草)」があるが、これは、花穂が神楽に使う鈴に似ていることからつけられた。
 
狐の孫を詠んだ句はほとんどないので、参考句は割愛する。
 
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御所裏に可愛き盗人萩盛る

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■ 御所裏に可愛き盗人萩盛る
           ( ごしょうらに かわゆきぬすびと はぎさかる )
                                                写真①盗人萩
イメージ 1一昨日から京都御苑で見た野草を紹介しているが、今日紹介する「盗人萩(ぬすびとはぎ)」もその一つである。この草花を知らない人には、この名前、何とも異様に思われるのではないだろうか。

その草花が、何と御所の外庭で広範囲に群生し、淡紅色の小さな花を咲かせていた。高貴な人がお住まいの「御所」のすぐ近くに「盗人」とは。その取り合わせが何とも面白く、最初に以下のように詠んだ。

  御所裏に不埒な盗人萩盛る 
              *不埒(ふらち)

しかし、この草花、名前に似合わず、萩に似て非常に可愛い。とても「不埒な」だとは感じられない。そんなこともあり、掲句のように「可愛い」に変えた。尚、「盗人萩」が季語かどうかは定かでないが、掲句では「萩」がついているので秋の季語に準じて詠んだ。
 
                                               写真②盗人萩の果実
イメージ 2ところで、何故「盗人萩」という名前になったのか気になるところだが、まず「萩」という名前は、花が似ているところから付けられたと容易に想像できる。残りの「盗人」だが、これは、果実(写真②)が盗人の忍び足の足跡に似ていることによるそうだ。そう言われれば似てなくもないが・・・。

因みに、過去には外来種の「荒地盗人萩(あれちぬすびとはぎ)」(写真⑤)を見て以下の句を詠んでいる。

【関連句】
 ① 怪しげな荒地盗人萩の道
 ② 裏通り盗人萩が忍び咲き

①は、怪しげな名前の響きを意識して詠んだ句。②は、「裏通り」と「盗人」と「忍び」という言葉の微妙な取り合わせで作った句。
 
                                                 写真③盗人萩
イメージ 3
 
ヌスビトハギ(盗人萩)は、マメ科ヌスビトハギ属の多年草で在来種。茎は直立または斜上してよく枝分かれし、その茎に沿って淡紅色の蝶形花を咲かせる。花期は7月~9月頃。秋に節の数が2つの豆果ができるが、鉤(かぎ)形の細毛で衣服などによくくっつく。
 
                                                   写真④盗人萩
イメージ 4
 
外来種のアレチヌスビトハギ(荒地盗人萩)は、北アメリカ原産の帰化植物。花の形や色は在来種に似ているが、それより2倍ほど大きく、在来種よりも華やかである。豆果の節は4~6個と多い。住宅地近辺の道端や空地などでは、こちらの方がよく見られる。(写真⑤)
 
                                                写真⑤荒地盗人萩
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白粉のほんの一夜の夕化粧

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■ 白粉のほんの一夜の夕化粧
                 ( おしろいの ほんのひとよの ゆうげしょう )
 
夕方頃散歩にでかけると、薄紅色の鮮やかな花が群生しているのをよく見かける。名前は白粉花(おしろいばな)。その別称は夕化粧(ゆうげしょう)という。花の名前には、きれいな名前のものもあるが、この花の名前は、どちらかというと艶っぽいと言った方が良いだろう。
 
イメージ 1何故こういう名前になったかというと、白粉花は、熟した黒い実をつぶすと白粉(おしろい)のような粉が出てくるからだそうだ。白粉の代わりに用いられたこともあったとのこと。一方夕化粧の方は、朝昼は花を閉じていて、夕方4時ごろに開くことから付けられた。英語でも「Four O'clock(四時)」というそうだ。
 
本日の掲句は、そんな花の名前からの連想で詠んだ句である。中七に「ほんの一夜の」を入れたのは、翌朝の朝には儚くも萎れてしまう一日花であることによる。「白粉花」、「夕化粧」は秋の季語。写真はいずれも夜7時半頃にフラッシュを使って撮影したものである。

因みに、この花に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。

 【関連句】
  ① 白粉の京の舞妓や夕化粧
  ② おやつ時まだ眠たげに夕化粧

①は、夜のお座敷に向け、白粉で念入りに化粧をしている京舞妓を思い浮かべて詠んだ連想の句。本日の掲句と趣向は似ている。②は、午後3時ごろの夕化粧(白粉花)を見て詠んだ句。この時間になっても、花は眠そうに閉じたままだった。
 
イメージ 2
 
白粉花(夕化粧)は、オシロイバナ科オシロイバナ属の多年草。原産地は熱帯アメリカで江戸時代初期に渡来したそうだ。花は、漏斗状の小さな花だが、花弁に見えるのは「がく」だとのこと。花色には薄紅色の他に、黄色、白色のもの、混色のものなどがある。花期は6月下旬から10月と長い。
 
尚、「赤花夕化粧(あかばなゆうげしょう)」を単に「夕化粧」ということもあるが全く別の植物である。
 
 
    【白粉花(夕化粧)の参考句】 
     白粉の花ぬつてみる娘かな       (小林 一茶)
     本郷の老教師おしろい花暗らし     (細見綾子)
     白粉花の実をつぶす指若しとす    (金子兜太)
     おしろいの辺りゆつくり暮れ泥む     (稲畑廣太郎)
     おしろいに滅びし星の光とどく      (今村恵子)    
*光(くわう)
 
 
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韮の花しゃしゃり出でたるせせり蝶

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■ 韮の花しゃしゃり出でたるせせり蝶
                           ( にらのはな しゃしゃりいでたる せせりちょう )
 
先日、近所の空地に植えてある韮の花が満開になっていたので写真を撮っていたら、せせり蝶が1匹(頭)飛んできて蜜を吸いだした。その様子が面白くて詠んだのが本日の掲句である。季語は「韮の花」で季は秋。(夏とするところもある。)「韮」単独では春の季語。

イメージ 3せせり蝶は、特に珍しい蝶でもなく、どこででも普通に見られる蝶。よく訪問しているブログで、クローズアップされた写真を見て、最近ファンになった。非常に可愛らしく、特に大きな目がチャーミングである。

この蝶について、ネット(主としてWikipedia)で調べたことを簡単に整理すると以下のようになる。

●せせり蝶(挵蝶)は、セセリチョウ科に含まれる蝶の総称ないし俗称。セセリチョウを標準和名とする蝶はいない。
●触角は他の蝶と同じく棍棒状で、先がとがっている蛾とは違う。但し、先端が鉤状に尖り、反り返っている。
●他の蝶とは違い、胴体が太く短く、頭部が大きく、翅が小さく、脚が短い。全体的にずんぐりした体型である。
●胴部が太いのは、翅を動かすための胸部の筋肉が多いからで、羽ばたきと飛行は素早く力強い。
●世界にはセセリチョウ科に分類される蝶が非常に多い。日本には4亜科37種がいる。(写真の蝶は、多分セセリチョウ亜科のイチモンジセセリ。)

因みに、この蝶の体型から、以下の句を詠んでみた。

   飛べせせりスペースシャトルのごと宙へ

体型がスペースシャトルに似ていると思うのだが、どうだろう。

イメージ 2
 
一方、韮は、ヒガンバナ科ネギ属の多年草。原産地は中国。花期は8月~10月頃。花茎の先端に、白い小さな花を20~40個つける。花弁は3枚だが、苞が3枚あり、6弁花のように見える。細長くまっすぐに伸びた葉は加熱すると柔らかく、和食で汁の実や薬味、おひたしなどにする他、中華料理、韓国料理によく用いられる。
 
尚、「花韮」と呼ばれる植物があるが、これは、韮とは全く別種の植物である。

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掲句は、どちらかというとせせり蝶が主題だが、それを詠んだ句はほとんどないので、以下には「韮の花」を詠んだ句を掲載する。

    【韮の花の参考句】
     戯れる蝶より白し韮の花        (林真砂江)
     韮の花にもまつはつて飛べるもの  (行方克己)
     人去つて風残りけり韮の花      (岸田稚魚)
     足許にゆふぐれながき韮の花     (大野林火)
     盛ともなれば艶めき韮の花      (倉田紘文)
 
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デュランタの秋風に舞うすみれ色

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■ デュランタの秋風に舞うすみれ色
                           ( でゅらんたの あきかぜにまう すみれいろ )
 
近所のある家の前に、青紫色の清楚で可憐な小花をたくさんつけた花が植えてある。この花の名前は、デュランタということは数年前に知ったが、言葉がつながらず句はなかなか詠めなかった。

イメージ 1最近になって、この花が、「デュランタ宝塚」という品種で、花色が宝塚歌劇団を象徴する「すみれ」の色にちなんで、この名がついたことを知り、本日の掲句を詠んだ。デュランタは季語になっていないので、「秋風」を秋の季語として使った。

尚、宝塚がついた由来に関しては、宝塚方面で多く栽培されていたからとか、宝塚のお花屋さんが名付けたからとか、他にもいろいろな説があり、本当のところあまりはっきりしていないそうだ。
 
デュランタは、クマツヅラ科ハリマツリ属(デュランタ属)の熱帯性花木。原産地は熱帯アメリカ(北米南部、南米、西インド諸島等)。明治中期に渡来。

通常「デュランタ」の名前で栽培されているのはデュランタ・レペンス(エレクタ)で、既述の花色が濃い青紫(すみれ色)で、花びらに白い縁取りが入る「タカラヅカ(宝塚)」、花色が白色の「アルバ」、葉っぱが明るい黄緑色で光沢のある「ライム」などの品種が広く出回っているとのこと。

イメージ 2
 
この内、「タカラヅカ(宝塚)」は、花期が春から秋(4月~10月)で、気温があれば一年を通して開花するとのこと。花茎に径1~2cmほどの花を房状に咲かせ、花後にオレンジ色のつぶつぶとした果実をたくさんつける。

デュランタの名前は16世紀の植物学者C.デュランテスに因む。別名にハリマツリ(針茉莉)、タイワンレンギョウがある。
 
イメージ 3
 
余談だが、宝塚歌劇団が歌う「すみれの花咲く頃」は、正式の団歌ではないそうだ。以下にその歌詞を参考まで掲載する。                      
                                                                                     すみれ       (4月撮影)
イメージ 4   
      すみれ花咲く頃  
 
 
    春すみれ咲き 春を告げる
  春何ゆえ 人は汝を待つ
 
  楽しく悩ましき 春の夢甘き恋
  人の心酔わす そは汝すみれ咲く春
 
  すみれの花咲くころ はじめて君を知りぬ
  君を想い日毎夜毎  悩みしあの日のころ
  すみれの花咲くころ  今も心ふるう
  忘れな君われらの恋 すみれの花咲くころ
 
  忘れな君われらの恋 すみれの花咲くころ

せせらぎに釣船草の並びたる

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■ せせらぎに釣船草の並びたる
                      ( せせらぎに つりふねそうの ならびたる )
 
イメージ 1釣船草(つりふねそう)は、その名前の通り、花の形が帆掛船を釣り下げたように見える草花である。湿地や小川の薄暗い場所に群生しており、田舎にいた頃は、方々で見かけたが、今住んでいる周辺では全く見られない。

その釣船草を見たのは、やはり京都の植物園の生態園で、本日の掲句は、そこをかつて見た小川のせせらぎに見立てて詠んだものである。釣船草は、秋の季語。

因みに、過去には以下の句を詠んでいる。

【関連句】
 ① さわ風にゆらりゆらりと釣船草
 ② 船底に甘い蜜あり釣船草
 ③ 暗がりに出航待つや釣船草

①は、咲いている場所を爽やかな風が吹いている沢と想定して詠んだもの。「さわ風」は、爽やかの「さわ」と「沢」をかけた造語。②は、この花の後方の渦巻状になっているところに、甘い蜜がいっぱい入っていることを知り詠んだ句。③は、釣船草を出航を待つ釣船に見立てて詠んだ句。
 
 
イメージ 2
 
釣船草(釣舟草、吊舟草)は、ツリフネソウ科ツリフネソウ属の一年草で、原産地は東アジア。花期は8月~10月。花色は紫色が主だが、白、黄などもある。それらを区別するために、紫釣船、白釣船、黄釣船ということもある。

イメージ 3
 
尚、紫釣船、白釣船は、花のうしろの方(距)は渦巻状になっているが、黄釣船は、そうなっていない。
果実はさく果で、熟すとホウセンカなどと同様に種子が弾けて飛び散るように拡がる。そのことから、野鳳仙花(のほうせんか)とも呼ばれる。他に法螺貝草(ほらがいそう)という別名もある。
 
    【釣船草の参考句】
     ゆらぎつつ夢の中まで釣船草   (石寒太)
     滝風に揺れ止まざりし釣船草   (若月瑞峰)
     水車場は釣舟草に暮れかかる  (平沢桂二)
     吊舟草虻乗り込んでしまひけり  (岩鼻十三女)
     山霧に釣船草の航くごとし     (米山千代子)
 
 白釣船
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野に出れば狗尾草のおもてなし

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■ 野に出れば狗尾草のおもてなし
                         ( のにでれば えのころぐさの おもてなし )
 
先日、ある公園の原っぱに行ったが、そこはもうすっかり秋の草に覆われていた。なかでも目立つのは、狗尾草(えのころぐさ)。どこにでもある草だが、ここでも一大勢力を誇っていた。

イメージ 1その草も、見ようによっては、頭を垂れて会釈をしてくれている、あるいは、尾を振って迎えてくれているようでもあり、気分も少し明るくなる。本日の掲句では、そのことを「おもてなし」と表現してみた。「狗尾草」は「猫じゃらし」ともいい、秋の季語。

ところで、植物にはいくつもの名前を持つものがある。この狗尾草も、たまたま、「狗尾草」の「狗」=「犬」と猫じゃらしの「猫」の名前を持つ。俳句では犬派が「狗尾草」、猫派が「猫じゃらし」を使う、というのは全くのウソだが、句をつくる場合、どの名前を使うか悩むというのは本当である。

掲句では、狗尾草を使ったが、仮に猫じゃらしを使って、以下のように詠むとどうだろう。

 野に出れば猫じゃらしらがお出迎え

字数の関係で「猫じゃらしら」としたが、何かくすぐられている感じ、あるいはからかわれている感じがしないでもない。それもまた面白いとは思うが、どれを選ぶかは最終的に、その時の気分次第といって良いだろう。

因みに過去には、「猫じゃらし」「狗尾草」を使い以下の句を詠んでいる。

    【関連句】
     ① 炎熱で青猫じゃらし焦げになり
     ② 揺れ止まぬ狗尾草の黄葉かな  
黄葉=もみじ

①は、真夏の暑い日に詠んだ句で、まだ青(緑)かった猫じゃらしも、炎熱で焦げ茶色に変色してきていることを詠んだもの。②は、秋も深まり、薄茶色に黄葉した狗尾草が風に揺れているのを見て詠んだ句。

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狗尾草は、イネ科エノコログサ属の一年草。花期は7月から9月。名前は、花穂が犬(狗)の尾に似ていることから「犬っころ草」と言われ、転じてこの名となったそうだ。犬子草(えのこぐさ)ともいう。

別名の「猫じゃらし」の方は、ふさふさした花穂(かすい)を猫の前で揺らしてやると、獲物と間違え、手を出してじゃれつくというので付いたとのこと。

尚、狗尾草は、粟の原種なので、若い葉と花穂は軽く火であぶり、醤油などで味付けしたり、天ぷらにしたりして食べられるそうだ。未だ、食べたことはないが。
 
    【狗尾草、猫じゃらしの参考句】
     猫じやらし仔猫の尾よりまだ短か    (松崎鉄之介)
     人待つてゐて睡たくて猫じやらし     (岡本眸)
     日と月のめぐり弥栄ねこじゃらし      (池田澄子) 
*弥栄(いやさか)
     活けられて狗尾草の落ちつかず     (原尚久)
     群がりて狗尾草のライブかな       (中野路得子)
 
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秋晴れの京の祭にパトレイバー

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■ 秋晴れの京の祭にパトレイバー
                    ( あきばれの きょうのまつりに ぱとれいばー )
 
昨日、一昨日の二日間、京都の岡崎公園近辺で、「京都岡崎ハレ舞台:京都岡崎レッドカーペット2014」というイベントが開催された。
 
イメージ 1このイベントでは、平安神宮前の「神宮道」にレッドカーペットが敷かれ、その上で多彩なパフォーマンスが行われる。また、隣接する公園では、京都他全国の特B級ご当地グルメの屋台ができ、じっくり味わうことができる。

このイベントは数年前から始められたが、昨年あたりから行くようになり、今年は、両日ともに行った。パフォーマンスは、吹奏楽、ダンス、アニソン、大道芸、ゆるきゃらなど実に多彩で朝から晩まで結構楽しめた。

今年特に目立ったのは、アニメ「機動警察パトレイバー」に登場する「98式AVイングラム」というロボットの模型で、同アニメを実写化した「THE NEXT GENERATION」で使った実物大の物。平安神宮の門をバックに、立った姿は迫力満点だった。

本日の掲句は、そんな情景を見て詠んだ句である。初日は曇っていたが、二日間目は青空も見えていたので、上五は「秋晴れに」とした。中七ではイベントを「京の祭」とし、そして、下五にはその祭を見守る機動警察「「パトレイバー」をおいた。

本句は、上述のように説明すれば、それなりに理解してもらえると思うが、説明しなければ全く理解不能な唯我独楽(ゆいがどくらく)の句となった。唯我独楽とは「ただ我れ独り楽しむ」という意味の勝手に作った造語。

それにしても、イングラムという近未来ロボットが、平安神宮という歴史ある建造物の前に立つとは。その情景が何ともアンバランスで面白く、こんなことができる日本はつくづく平和だなと思った。

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ところで、パトレイバーのイングラムだが、実のところ今回初めて見た。ロボットと言えば、我が世代では、鉄人28号、鉄腕アトム。その後大分時を経て、数年前ガンダムという名前を知ったが、イングラムは聞いたことがない。

そこで、少し調べて要点をまとめてみたが、結構ややこしいので、アニメやロボットに興味のない方は以下を飛ばしていただきたい。

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まず、レイバーとは、アニメの設定では、ロボット技術を応用した汎用多足歩行型作業機械のこと。地震災害からの復興工事や、国家的な巨大土木事業「バビロンプロジェクト」に関係する開発事業などで、急速に普及・発展する。

その一方で、レイバーによる事故や、レイバーを使用した様々な犯罪行為(酔っ払いの乱闘騒ぎ、窃盗からバビロンプロジェクトに反対するエコテロリストによるテロ行為まで)が多発して社会問題となる。

この「レイバー犯罪」に対処するため、警視庁に設けられた部隊が、「特科車両二課中隊」で、通称パトロールレイバー=パトレイバーと呼ばれた。そして、その部隊に導入された最新鋭機種が「98式AVイングラム」である。
 
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時代設定は漫画が発表された1988年の10年後の1998年頃。既に過去になっているが、その当時近未来をどう描いていたかを考える上で面白い。また、戦闘ロボットでなく民間の作業ロボットからイングラムが誕生したというのも実にユニークであり、リアリティがある。

それはさておき、岡崎レッドカーペットでのいろいろなパフォーマンスは、パトレイバー:イングラムに見守られながら、ラストまで、平穏に、賑やかに行われたようである。
 
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藤袴よせて古風に女郎花

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■ 藤袴よせて古風に女郎花
          ( ふじばかま よせてこふうに おみなえし )
 
秋の七草である二つの草花、藤袴(ふじばかま)と女郎花(おみなえし)が重なって咲いているのを植物園で見た。青空をバックに、紫色の藤袴、黄色の女郎花の取り合わせが実に良く、えも言えぬ小景を作っていた。そこで、当初、その景を以下のように詠んだ。

イメージ 3   藤袴取り合わせよき女郎花

ただこの句は、花を並べただけで趣向が分からないと思い、詠み直したのが本日の掲句である。花の名前から藤色の袴をはく古風な女郎(じょろう)という意味合いをこめて詠んでみた。女郎とは、今でこそ遊女というイメージが強いが、かつては、貴族の令嬢・令夫人を称する敬語として使われていたとのこと。藤袴、女郎花は、共に秋の季語。

ところで、これらの花はいずれも古くから愛でられた花であり、藤袴は、万葉集や源氏物語にも登場する。名前は、花の色が藤色で、筒状の花弁が袴に似ているということで付いたとのこと。

一方、女郎花の女郎の意味は既に述べたが、読みの「おみなえし」の「おみな」は「女」、「えし」は古語の「へし(圧)」で、美女をも圧倒する美しさから名づけられたとのこと(諸説あり)。

ただ、今日では外国の花が沢山流入してきて、どちらかというと非常に地味な花として見られている。そのせいなのか、近辺ではあまり見られず、残念ながら、いずれも絶滅危惧種になっている。
 
因みに、過去に藤袴、女郎花で詠んだ句としては以下のものがある。

    【関連句】
     ① 藤袴華やぎし世ぞ偲ばるる
     ② 藤袴そのもじゃもじゃが気持ち良き
     ③ 名がためか滅多に会えぬ女郎花

①は、袴をはかなくなった今日を愁い、全盛の世を偲んでいる様子を詠んだ。寓意を含む。②は、藤袴の花の先端から糸のようなもの(雌蕊)が出ているが、吸蜜している蝶も気持ち良さそうだと詠んだもの。③は、「女郎」という言葉は、今は「遊女、娼妓」などのイメージが強く、印象が良くない。そのせいで滅多に見れなくなったのかと詠んだもの。
 
イメージ 1
 
秋の七草については、山上憶良(やまのうえのおくら)が万葉集で詠んだ以下の歌が元ととなり今に至っている。

   秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種の花 
                 *指折り(およびをり) *七種(ななくさ)
   萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝貌の花
      *尾花(おばな)=芒(すすき) *朝貌(あさがお):現在の桔梗であるというのが定説

ただ、これでは少し覚えにくいので、五七五七七にあわせて以下のように覚えると良いだろう

   萩尾花 葛撫子に 女郎花 藤袴はく 桔梗の花 
   ( はぎおばな くずなでしこに おみなえし ふじばかまはく きちこうのはな )
 
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穂芒の飄々として逆らわず 

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■ 穂芒の飄々として逆らわず 
          ( ほすすきの ひょうひょうとして さからわず )
 
先日、鴨川の岸辺を散歩していたら、川べりに芒(すすき)が群生しているのを見た。強風に吹かれたせいか斜めに立っているものが多かったが、時々風が吹くとそれに身を任せて揺れていた。

イメージ 1本日の掲句は、そんな様子をみて詠んだ句である。中七で使った「飄々として」という言葉は、本来「風に吹かれてひるがえるさま。」をいうが、人間に使う場合は、「性格・態度が世俗を超越していて、とらえどころがないさま。」をいう。下五に「逆らわず」を置いて、多少の寓意を込めた。

尚、「穂芒」は、「芒」「花芒」「尾花」とともに、秋の季語。「枯芒」となると冬の季語、「青芒」は夏の季語、「末黒の芒」は春の季語となる。

ところで、芒はなぜ「すすき」というのか。有力な説としては、「すす」が、葉がまっすぐにすくすく生い立つことを表わし、「き」は芽が萌え出でる意味の 「萌(き)」で、「すすき」となったという説がある。(諸説あり。)

漢字では、「芒」の他に「薄」と書くが、「芒」は中国の表記で、「薄」は和製漢字で「くさむら」の字義から使われたようだ。また、尾花(「おばな)という呼び方は、花穂の形を動物(鶏、狐など)の尾に見立てたもの。

因みに「芒」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。

     【関連句】
      ① 突風にふわりと揺らぐ芒かな
      ② 花すすき明るき様で立ちてあり
      ③ 洪水に耐えて再た起つ芒かな  
*再た起つ(またたつ)

①は、飯田蛇笏の名句「おりとりて はらりとおもき すすきかな」を意識して作った句。②は、歌謡曲の「船頭小唄」、「昭和枯れすすき」に出てくる「枯れすすき」の暗いイメージに対比させて詠んだ句。③は、台風の洪水の後、一旦水の中に沈んだ芒の一群が立ち上がってきているのを見て詠んだ句。

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芒は、イネ科ススキ属の多年草。原産地は日本、中国などの東アジア。夏に青々と葉が茂り、秋になると茎を真っ直ぐに伸ばし、先端に黄褐色あるいは紫がかった褐色の花穂を出す。花期は7月~10月。晩秋になると花穂は白っぽくなり、更に進むと枯れ色になる。秋の七草の一つ。
    
     【穂芒、花芒の参考句】
      穂芒や野末は暮れて汽車の音     (正岡子規)
      穂芒の解けんばかりのするどさよ    (星野立子)
      穂芒のほぐれ初めの艶なりし      (能村登四郎)
      花芒日ざしはなれてまた触れて     (宮津昭彦)
      草枕こよひ芒を枕かな           (長谷川櫂)
 
 
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