■ 出水耐え冬川を生くヌートリア
( でみずたえ ふゆがわをいく ぬーとりあ )
先日、様々な水鳥がやってくる鴨川へ行ったところ、たまたまパン屑を撒いている人がいて、岸辺近くに、多くの水鳥たちが集まっていた。近づいてみると、土手の方にも鳩が沢山いたが、その中に大きな猫ぐらいのヌートリアが二匹、のそのそと動いていた。
寒中に鴨川泳ぐ大鼠 (ヌートリア)
本日の掲句の方は、そんなヌートリアに再会し、「9月中頃の台風による増水にも耐えて、この寒い冬川でよく生きていたな」と感心し、詠んだものである。当初は、以下のように詠んだが、「出水」が夏の季語なので、「冬川」を入れて冬の句とした。
かの出水耐えて生きたかヌートリア
ところで、俳句では「てにをは」即ち助詞の使い方が非常に重要だと言われている。掲句でも、中七において次の3つを検討した。
①冬川に生く ②冬川を生く ③冬川と生く
たった一字の違いだが、だいぶニュアンスが違う。①は、単にこの冬川の中で生きているという感じだが、②は、出水に耐え、今またこの寒さ厳しい冬川という状況を生きるという意味合いが感じられる。更に、③は、この冬川をこれからも棲家として生きるというニュアンスとなる。言葉で説明すると何か微妙だが、句意からして②があっていると思い、それを採用した。
ヌートリアは、「ネズミ目ヌートリア科に属する哺乳類の外来種。カピバラに似るが種類が違う。南米原産で毛皮を取るために移入し、毛皮の需要の激減で野外に放逐され野生化したとのこと。現在西日本各地に生息し、生態系への影響が深刻で駆除の対象になっている。
京都府・市の方でも捕獲・駆除計画が進行しているようで、このヌートリアも今後どうなるか分らない。やはり、最大の天敵は人間のようだ。なかなかディズニーのおとぎ話のようにはいかない。