■ との曇り払い清めよ花八つ手
( とのぐもり はらいきよめよ はなやつで )
この時期に咲く花として忘れてならないのは「八つ手」の花。ぱっと見、花とは思えないが、子細に見れば小さい花が寄り集まって、球状の花を形成していることが分かる。
面白いのは、同じ花でありながら、雄蕊が成熟する「雄性期(ゆうせいき)」と花弁と雄蕊が散って雌蕊だけが伸びる「雌性期(しせいき)」があるということ。
雄性期の花は、白い花弁と雄蕊が美しく、ふんわりとした姿になる。(右写真)しかし、雌性期の花は、坊主頭に毛が生えた感じになり、少々ごつごつした感じになる。
本日の掲句は、そんな八つ手の花を見て詠んだ句だが、実のところ、その花よりも葉に着目して詠んだ句である。
句意は、「この曇り空をその大きな葉で払い清めてくれ。」というもの。「とのぐもり」は、「空が一面に曇ること。たなぐもり。」の意。花八つ手は冬の季語。
尚、中七に使った「払う」と「祓う」はどう違うのか。実は同語源で、「祓う」はもっぱら「神に祈って、罪やけがれ・災いなどを除き去る。」の意で使う。「払う」は広く「邪魔・不要・無益なものなどを手や道具を使い除去する。」という意で使う。
因みに、「八つ手」に関しては過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① ごつごつとごっつい花ぞ花八つ手
② たなごころころげてまるき花八つ手
③ 妖しきや真白き玉の花八つ手
①は、八つ手の花について最初に詠んだ句。この時は「ごっつい」花という印象を持った。
*ごっつい:「ごつい」を強めた言葉で、「大きい」「すごい」「武骨な」などの意。
②は、花がニット帽のポンポンのように丸く、集合して咲いているのに着目して詠んだ。「たなごころ」は掌=手のひらのことで大きい葉の喩え。
③は、八つ手が開花し始めた時期、即ち雄性期の花を見て詠んだ句。「妖し」は、「神秘的な」「魅力的な」という意味。
②は、花がニット帽のポンポンのように丸く、集合して咲いているのに着目して詠んだ。「たなごころ」は掌=手のひらのことで大きい葉の喩え。
③は、八つ手が開花し始めた時期、即ち雄性期の花を見て詠んだ句。「妖し」は、「神秘的な」「魅力的な」という意味。
八つ手は、ウコギ科ヤツデ属の常緑低木。葉はやや厚手で光沢があり、掌状で5~11の奇数に裂けている。この大きな葉に着目し、「天狗の羽団扇(はうちわ)」という異名がある。
花期は11月~12月。花が少ないこの時期に花を咲かすのは、花粉の媒介者である昆虫の来訪を多くし、受精を確実なものにするためだとか。
「花八つ手」を詠んだ句は多く、これまで何句か参考句として掲載したことがあるが、以下にはそれ以外のものを掲載した。尚、表記には、他に「花八手」「花八ツ手」がある。
【花八(つ、ツ)手の参考句】
唐ゆきの悲しき港花八つ手 (岡部六弥太)
花八つ手鍵かけしより夜の家 (友岡子郷)
人に和すことの淋しさ花八ツ手 (大木あまり)
君発たせ来し駅裏の花八ツ手 (寺井谷子)
庭先に江の電軋む花八つ手 (水原春郎)