■ 碧落に赤冴え冴えとピラカンサ
( へきらくに あかさえざえと ぴらかんさ )
赤い実をつける植物で、近辺でも時々目にするようになったのがピラカンサ。この木は南天よりも高木で、木全体が赤く燃えるがごとく多くの実を付ける。
先日「蟻通し」を一両と言い、更に、十両、百両、千両、万両と呼称される植物があると記事に書いた。すると、ある読者から「ピラカンサなんかは、百万両とでも言いましょうか」というコメントが寄せられた。
まさに言いえて妙で、万両の百倍以上の実が集まった感じになる。
本日の掲句は、そんなピラカンサを見て詠んだ句である。上五で使った「碧落」は、青い空、大空のこと。
中七の「冴え冴え」は、「澄んではっきりしているさま。」 「冬の寒さが透き通って身にしみるように感じるさま。」などの意味があり、冬の季語になっている。
尚、「ピラカンサ」は、花を春の季語、実を秋の季語にしている歳時記もあるようだが、季語としていないところもある。
因みに、ピラカンサに関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 朝寒の家に燃え立つピラカンサ
② 底冷えの朝を燃やせよピラカンサ
①、②とも、ある寒い朝、家を覆うように実を付けているピラカンサを見て詠んだ句。①では「朝寒」が秋の季語。②では「底冷え」が冬の季語。
ピラカンサは、バラ科トキワサンザシ(ピラカンサ)属の常緑中高木。ヨーロッパ東南部、アジアが原産地。花期は5月~6月で白い小花を咲かす。果実は10月から2月頃までなっている。赤い実の他に橙、黄のものもある。
名前はギリシア語で、火のような真っ赤な実を意味する「pyro=炎」と、枝の「acantha=棘」を合わせてつけられた名前だとか。中国名も同じ趣旨で「火棘(かきょく)」。和名では、赤い実のものを「常盤山櫨子(ときわさんざし)」という。(橙、黄のものについては別名あり。)
ピラカンサに関しては、最近詠まれた句はあるものの、評価が定かなものはないので割愛する。