■ 一両と言えど大金蟻通し
( いちりょうと いえばどたいきん ありどおし )
現在、花があまり見られない代わりによく目にするのが、赤い実をつけた植物。本ブログでも、南天、万両、千両などを既に取り上げた。
その他にも高木のピラカンサやクロガネモチなどが木全体に赤い実をつけている。
今日取り上げた「蟻通し(ありどおし)」も赤い実をつける植物だが、これは、あまり見かけないかもしれない。
実の大きさは万両より一回り小さく、ばらけてなる。名前は葉のつけ根に長い棘があり、それが蟻を突き刺すほど鋭いことからついたと言われるが異説もある。
また、別称に「一両」がある。その由来については後述するとして、本日の掲句は、そのことを知って詠んだ句である。
先日のブログでも記載したが、一両は現在のお金に換算すると10万円~30万円。まさに大金である。
尚、「蟻通し」=「一両」は季語ではないが、「万両」「千両」に準じ冬の季語として使用した。
ところで、なぜ「一両」という名前がついたのか。「両」のつく植物として「万両」「千両」は有名だが、実は他に「百両」「十両」もある。
名づけられた経緯をたどると、江戸時代に「唐橘(からたちばな)」が漢名で「百両金」と言われ、それよりも大型のセンリョウが「千両」、実がたくさん垂れるマンリョウを「万両」と呼称するようになった。
一方、「薮柑子(やぶこうじ)」は実が少ないことから「十両」、そして「蟻通し」は実が小粒で少ないことから「一両」があてられたようだ。(異説あり)
蟻通しは、アカネ科アリドオシ属の常緑低木。本州(関東地方以西)から沖縄に自生する。花期は4~5月頃。葉腋に筒状の白い4弁花を通常2個ずつ咲かせる。果実は液果で直径5~6mmの球形。冬に赤く熟し、翌春までの長期間枝に残る。
そのことから「有り通し」と書き、「千両万両有り通し」と称して正月の縁起物とすることもある。
「蟻通し」「一両」は季語になっていないこともあり、詠まれた句はほとんどないので、参考句は割愛する。