■誰そ彼・彼は誰 二句
○ 紅葉散る誰そ彼をゆくシルエット
( もみじちる たそがれをゆく しるえっと )
○ 枯葉舞う彼は誰に聞くバイク音
( かれはまう かわたれにきく ばいくおん )
本日の掲句は、時を表す「誰そ彼」「彼は誰」という二つの言葉を使った句である。
一方、「彼は誰」とは、「かわたれ」と読み、「彼(あなた)は誰だ」とはっきり分からない薄暗い時刻を指す。明け方と夕方の両方に使われていたが、夕方を「たそがれ」というのに対し、明け方に限定して用いられるようになったとか。もっとも実際に使われることは少ないようだが。
こういう言葉は、お日様の出没に合わせて生活していた頃にできた言葉と思うが、単に明け方、夕方というよりも幾分か詩的な感じがする。ただ、今はビルや家の中で過ごすことが多く、なかなか実感できなくなった言葉でもある。
第一句は、紅葉狩りもピークを迎えた先週末に作った句で、誰そ彼(黄昏)時に、紅葉散る道を歩いて帰る人々のシルエット(影絵)を見て詠んだ句である。季語は「紅葉散る」で冬。
第二句は、第一句の対として、明け方の「彼は誰」時に合わせ、近所の景を詠んだものである。まだ薄暗い道には枯葉が降りやまず、人は誰も通っていない。その時、静けさを破るように、新聞配達のバイク音が聞こえてきた。そんな情景を詠んだ句である。季語は枯葉で冬。
写真はいずれも黄昏(たそがれ)時に撮ったもの。
【黄昏(たそがれ)の参考句】
山は暮れて野は黄昏の薄かな (与謝蕪村)
黄昏れてゆくあぢさゐの花にげてゆく (富沢赤黄男)
山は暮れて野は黄昏の薄かな (与謝蕪村)
黄昏れてゆくあぢさゐの花にげてゆく (富沢赤黄男)