■ 憐れなる破れかぶれや枯れ蓮
( あわれなる やぶれかぶれや かれはちす )
先日訪れた植物園では紅葉がまだ残っていたが、葉っぱがすっかり散ってしまった裸木も多く見られた。此処もだんだんと冬らしい荒涼とした景が広がってきた感じである。
そんなことを思いつつ蓮池の方に行くと、茶色に変色した蓮の葉と折れた茎が散乱していた。以前来た時は、まだ緑の葉が結構残っていたが、様相は一変していた。
本日の掲句は、そんな景を見て詠んだ句。「枯れ蓮(かれはちす、かれはす)」は葉が枯れきった蓮のことで、「枯蓮」とも書き冬の季語になっている。
中七で使った「破れかぶれ」とは、「思うようにならなくて、もうどうにでもなれ、という気持。すてばち。」という意。
「枯れ蓮」の様子は、まさに「破れかぶれ」の憐れな結果を表しており、そうならないようにという願い込めて詠んだ。
最近の世界の情勢を見ると何となく危うい感じがする。
ところで、蓮に関してはいくつも季語があり、整理すると以下のようになる。
【春】 蓮植う
【夏】 蓮、はす、はちす、蓮の花、蓮華、紅蓮、白蓮、蓮(の)葉、蓮(の)浮葉、
【秋】 蓮の実、破(れ)蓮、敗苛、やれはす、やれはちす、秋の蓮、蓮の飯
【冬】 枯(れ)蓮、かれはす、かれはちす、蓮枯る、蓮の骨、蓮根掘る
こう見てみると、蓮は年間通して親しまれてきた植物であることが分かる。事実、蓮は古来から日本人に馴染みが深く、万葉集にもかなり歌われている。中国でも大いにもてはやされ、蓮を詠んだ漢詩は枚挙にいとまがないとのこと。
蓮の葉に関して言えば、「露を宿した蓮の葉」が儚さを象徴し、「破れ蓮」は、「敗荷」とも書き、敗残の惨めな姿を髣髴とさせる。そして、「枯れ蓮」は、茎も折れ、まさに力尽きた荒涼とした情景を思い起こさせる。
そうした蓮の葉と姿の変化を捉えて、過去には以下の句を詠んだ。
蓮の葉も破れ尽きたり枯れ蓮
「枯れ蓮」「枯蓮」に関しては詠まれた句も非常に多い。以前何句か紹介したことがあるが、以下には、それ以外のものを選んで掲載した。
【枯(れ)蓮の参考句】
水月に雨がきらりと枯れ蓮 (飯田蛇笏)
*水月(すいげつ): 水面に映る月の姿。
枯蓮の水面やうやく平らなり (中村汀女)
枯蓮をうつす水さへなかりけり (安住敦)
枯蓮に荒涼として日向あり (山田弘子)
水影に己れかむさり枯蓮 (行方克己)
枯蓮の水面やうやく平らなり (中村汀女)
枯蓮をうつす水さへなかりけり (安住敦)
枯蓮に荒涼として日向あり (山田弘子)
水影に己れかむさり枯蓮 (行方克己)