■ 去来碑の陰を照らせる石蕗の花
( きょらいひ のかげをてらせる つわのはな )
先日、冬季の代表的な花として「山茶花(さざんか)」を取り上げたが、草本で代表するものと言えば「石蕗(つわぶき)」を上げなければならないだろう。
この花、10月中頃から咲いているが今丁度盛りを迎え、寺社の境内や日本庭園など方々で見ることができる。
先日も、近くにある真如堂(しんにょどう)という寺の境内で、向井去来(むかいきょらい)の句碑の周りに咲いているのを見た。
本日の掲句は、その句碑と石蕗の取り合わせで詠んだ句。石蕗は、俳句では「石蕗の花」と書いて「つわのはな」と読ませ、冬の季語になっている。
ところで、去来と真如堂との縁は深く、向井家の墓があり、去来もそこに埋葬されている。
句碑に刻まれた以下の句は、1694年に行われた信濃善光寺如来の出開帳法要に参列した時の様子を詠んだ句だと言われている。
涼しさの野山に満つる念仏かな
向井去来は、儒医の二男として生まれるが、若くして武士の身分をすてた。三十歳頃、松尾芭蕉に師事。蕉門十哲の一人と言われ、蕉風の代表句集「猿蓑」の編纂にも携わる。京都嵯峨野に別荘「落柿舎(らくししゃ)」を所有。
師が偉大すぎてか、去来の句はあまり知られてないが、実際にどんな句を詠んだのか。残されている句からいくつか選んで以下に掲載した。京都周辺の地名を詠んだ句も結構ある。
【向井去来の句】
岩鼻やここにもひとり月の客
柿主やこずゑは近きあらし山
有明にふりむきがたき寒さ哉
初雪や四五里へだてゝひらの嶽
池の面雲の氷るやあたご山
話は戻って、「石蕗」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 石垣にぬっと突き出る石蕗の花
② 石蕗や解体工事の音止まず
③ つましくも恙無きかな石蕗の花
*恙無き(つつがなし):病気・災難などがなく日を送ること
① 石垣にぬっと突き出る石蕗の花
② 石蕗や解体工事の音止まず
③ つましくも恙無きかな石蕗の花
*恙無き(つつがなし):病気・災難などがなく日を送ること
①は、石垣の中からぬっと出て光り輝いている花の様子を詠んだ。
②は、解体工事中の現場に残された石蕗が、明るい光を放って咲いているのを見て詠んだ。
③は、石蕗の花のイメージを現在の生活と重ねて詠んだ句で、各節の最初の音を「つ」で揃えた。
石蕗は、キク科ツワブキ属の多年草。原産地は日本、中国など。花期は10月中頃から11月末頃。名前は、葉が蕗(ふき)に似ていて艶があることから「艶葉蕗(つやばぶき)」となり、それが転じて「つわぶき」となったとのこと。(異説あり)
*真如堂は紅葉の名所としても有名
石蕗(つわ、つわぶき)の花を詠んだ句は非常に多いが、記事が長くなったので参考句は割愛する。
*真如堂の参道