■ 力芝ここ一番を踏ん張らん
( ちからしば ここいちばんは ふんばらん )
今日取り上げた野草も、川辺や道端などで誰しもが普通に見たことがあると思われる「力芝(ちからしば)」。
試験管や瓶を洗うブラシのような花穂をつけ、子供の頃、それを風車のように回したり、削ぎ落して毬栗を作ったりして遊んだ記憶がある。
名前は、数年前に知ったのだが、非常にしっかりした草のため、引き抜くにも刈り取るにも非常に力がいることから付いたと言われている。
本日の掲句は、そんな力芝を見て詠んだ句。中七、下五の「ここ一番を踏ん張らん」とは、自分を励ます言葉でもあり、誰かを応援する言葉でもある。
尚、力芝は季語になっていないようだが、この時期に花を咲かす草花なので、この句では秋の季語に準じて使用した。
*ここ一番:重要な場面や転換点となる状況のことを幅広く指す言葉。
因みに、過去には以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 我もまた切磋琢磨や力芝
② 憂き世なら掃き清むべし力芝
①は、ブラシのような花形と名前にある「力」から、「切磋琢磨」という言葉を連想し詠んだ句。
②は、この世を「憂き世」と思うなら、この力芝を使って掃き清めるべきだというのが句意。
力芝はイネ科チカラシバ属の多年草。原産地は、日本、朝鮮半島など。花茎は夏以降に出て、真っすぐに立つ。8月から11月にかけて、先端近くの軸に針状の毛に包まれた小穂が多数集まった、尾のような花穂を形成する。
花の形状は昨日取り上げた狗尾草(えのころぐさ)=猫じゃらしに似るが、これよりもかなり大きく、頭を垂れることはない。また、ブラシの木の花にも似るがこれよりは一回り小さい。
季語でないでせいか、「力芝」を詠んだ句が見当たらないので、参考句は割愛する。