■ 観月祭より 二句
○ 只ならぬ月ぞ今見る東山
( ただならぬ つきぞ いまみる ひがしやま )
○ 琴の音の沁みて流るる観月祭
( ことのねの しみてながれるる かんげつさい )
昨日は昼になっても曇っていて、中秋の名月を見ることはできないだろうと諦めていた。
しかし、雨が降ってなかったので、八坂神社の観月祭を見にいくことにした。
始まりは夜の7時と案内されていたが、少し早めにと思い、6時過ぎに参道の坂を上った。
すると、丁度東山の山際に、薄い雲に透けた大きな月が見えた。思いがけないことでもあり、先ずは何枚かの写真を撮り、暫しその場に佇んで月を眺めた。
「本日の第一句は、その時の感動を詠んだ句である。「月」は単独で使われると秋の季語になる。
その後、境内にある舞殿(ぶでん)に行くと、前座なのか、タイミングよく「京都女子大学交響楽団」のメンバーによる演奏が始まった。
全体演奏でなく弦楽器、フルート、ホルンの重奏。しっとりとした演奏で、洋楽器の音色もなかなか観月会に合うと感じた。
7時からは、予定通り、神主の皆さんが舞殿に登場され神事がとり行われた。そして、事前に募集され入選された和歌5首が古式に則って献詠された。その中の一首が以下。兼題「露」。
葉の真なか露ころころと遊びおり
我もひととき風に身を置く (前田敏恵)
次に奉納されたのが、「弥栄雅楽会」による、管絃「武徳楽(ぶとくらく)」、舞楽「打球楽(だきゅうらく)」。ゆったりとした音色と踊りで、しばし幽玄の世界に引き込まれた。
続いて奉納されたのが、「山崎晃秀社中」による琴の演奏。演目は、筝曲「嵯峨の秋」と「星のみずうみ」。
本日の第二句は、それを聞きながら詠んだ句で、まさに琴の音がしっとりとした空気に滲みこみ、心に沁みてくる感じだった。「観月(祭)」は秋の季語。
最後の奉納は、「八坂神社祇園太鼓」による太鼓演奏「祇園守」。八坂神社の守り神である「素戔嗚尊(すさのおのみこと)」を表現したもので、フィナーレに相応しい気迫ある演奏だった。
この頃(9時前)になると月は上空に移動し、雲から抜け出て皓皓と輝いていた。
因みに昨年は、下鴨神社(賀茂御祖神社)で行われた「名月管弦祭」に行き、以下の句を詠んでいる。
祭事終え仰ぐ空には望の月
祭事が行われた境内では、樹木に遮られ月を見ることができなかったが、帰途につき、境内を少し出て空を仰ぎ見ると、真ん丸の月=望の月(もちのつき)が明るく輝いて見えた。
「中秋の名月」を詠んだ句は非常に多いが、今回は特に「観月会」を詠んだ句をいくつか選んで掲載した。
【観月会の参考句】
人の来てしづかに坐り観月会 (伊藤敬子)
観月会琵琶の音締めを襖越し (高澤良一)
観月会藪の深さの見ゆるかな (依田明倫)
風音のしては止みけり観月会 (奥田智久)
南大門潜戸開けて観月会 (村上冬燕)