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Channel: 写真・俳句ブログ:犬の散歩道
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灼熱の心一途に蝉の恋

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■ 灼熱の心一途に蝉の恋    
                   ( しゃくねつの こころいちずに せみのこい )

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7月18日に近畿地方においても梅雨明けが宣言された。今年はあまり雨が降らなかった感じだが、ひとたび梅雨が明けると急に喧しく聞こえてくるのが蝉の声である。

鳴きだすのは雄で、雌を求めて鳴くのだが、それを「蝉の恋」と表現し、本日の掲句を詠んでみた。

上五の「灼熱」とは、「焼けつくように熱いこと」を言うが、転じて「激しく情熱をもやすこと」をいう。少し大袈裟だがその鳴き声の激しさから、あながち的外れとも言えないだろう。

「猫の恋」が春の季語なので、「蝉の恋」も季語になっているのではと思ったが、季語にはなっていない。したがって、本句では「蝉」が夏の季語となる。

因みに、「蝉」に関しては、これまで何句も詠んでいるが、その中から比較的ましなものを以下に再掲する。


    【関連句】
     ① 梅雨明けになるや俄かに蝉時雨
     ② 降りしきる雨にも負けず蝉時雨
     ③ それほどに呼ぶのは誰ぞ蝉時雨


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①は、梅雨明け宣言が出された途端、待っていたかの如く、蝉時雨の音が急に大きくなってきたことを詠んだ。

②は、雨が降りしきる中でも、それに負けじと鳴いている様子を詠んだもの。中七は、宮澤賢治の有名な詩「雨にも負けず」からの引用。
③は、懸命に鳴く蝉の声に、必死になって誰かを呼ぶ人の思いをダブらせて詠んだ句。蝉の声は、時に何とも悲痛に聞こえることがある。


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蝉は、卵→幼虫→成虫という不完全変態(蛹:さなぎを経ない)をする昆虫である。幼虫として地下生活する期間が長く、3~17年(アブラゼミは約6年)に達するそうだ。成虫期間は僅か1~2週間。

鳴くのはオスの成虫で、腹腔内に音を出す発音筋と発音膜、音を大きくする共鳴室、腹弁などの発音器官が発達しており、懸命に鳴いてメスを呼び命をつなぐ。そして、ついには落蝉となって一生を終える。

長い長い暗闇の生活から地表(世間)に出て、華々(はなばな)しく?一生を終える。こんな生き方ってどうなんだろうと思ったりもするが、良いかどうかは蝉に聞いてみるしかないだろう。 


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参考句に関しては、これまで何句か取り上げたが、今回は「蝉時雨」以外で詠んだものを敢えて選んでみた。

     【蝉の参考句】
       馬鈴薯を夕蝉とほく掘りいそぐ   (水原秋桜子)
       唖蝉も鳴く蝉ほどはゐるならむ   (山口青邨)
       百年の館とりまく蝉の声       (柴田白葉女)
       風すがし気ままに移る森の蝉   (河野南畦)
       砂あぶる雀見てゐて蝉の恋    (宮坂静生)

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