■ 夜桜 二句
○ 暗闇に浮かぶ妖しき糸桜
( くらやみに うかぶあやしき いとざくら )
○ 外つ国の言葉飛び交う花の宵
○ 外つ国の言葉飛び交う花の宵
( とつくにの ことばとびかう はなのよい )
本日の掲句は、いずれもそこで見た情景を詠んだものである。
第一句は、全国的にも有名な円山公園の枝垂れ桜がライトアップされ、暗闇に白く妖しく浮かんでいるのは見て詠んだもの。下五の「糸桜」は「枝垂れ桜」の別称で、いうまでもなく春の季語。
第二句は、もはや当たり前のごとく、多くの外国人が夜桜見物に押し寄せ、周囲からは聞きなれない言葉が様々に聞こえてくる様子を詠んだ。下五の「花の宵」は「花の酔い」にかけている。尚、単に「花」と言えば桜のことを指し春の季語となる。
ところで今回、掲句を詠むにあたっては、季語の「夕桜(ゆうざくら)」と「夜桜(よざくら)」の違いについて再確認した。
一方「夜桜」は、「夜見る桜の花」で、昔であれば灯篭や篝火に照らされた桜、今であればライトアップされた桜ということになる。
改めて比べてみると、共に暗くなってから見る桜だが、その趣は全く違うことが分かる。
そこで、上記の確認を経て「夜桜」に修正すべきと思ったが、「夕桜」と違い四音なので字足らずとなる。そんなこともあり、掲句のように詠み直した。
事の序(ついで)に言えば、四音の季語は、下五では非常に使いにくく、上五か中七に使うのがほとんどである。
【夜桜の参考句】
夜桜や辻燈籠の片うつり (正岡子規)
夜桜の一枝長き水の上 (高野素十)
九分咲きの夜桜に灯をあびせたる (京極杞陽)
夜桜のフランクフルトソーセージ (高澤良一)
夜桜を駈け抜け行きし漢かな (行方克己)