■ 赤き葉も初々しきや山桜
( あかきはも ういういしきや やまざくら )
桜の種類は非常に多く、どれも似ているので、なかなか品種名までは覚えられない。それでも最近になって、緋寒桜(ひかんざくら)や河津桜(かわづざくら)など特徴のあるものは少しずつ見分けがつくようになった。
今日取り上げた「山桜(さまざくら」は、名前はよく知っていたが、近辺にあまり植えてないこともあり、実物をしっかり見たことはなかった。それが、先日行った植物園で満開になっているのに遭遇し、その美しさにすっかり魅了された。
本日の掲句は、その山桜を詠んだもの。山桜の特徴は、何と言っても赤い葉と花が同時に開くこと。葉に先駆けて花を咲かす染井吉野(そめいよしの)のような華やかさはないが、慎ましくもしっとりとした美しさがある。「山桜」はいうまでもなく春の季語。
○ 世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし (在原業平)
○ ひさかたの光のどけき春の日に静心なく花の散るらむ (紀友則)
○ 敷島の大和心を人問わば朝日に匂う山桜花 (本居宣長)
【山桜の参考句】
うらやまし浮世の北の山桜 (松尾芭蕉)
みよし野のちか道寒し山桜 (与謝蕪村)
山桜花の白さに散りやすき (高浜虚子)
山桜雪嶺天に声もなし (水原秋桜子)
山又山山桜又山桜 (阿波野青畝)