■ 野にも出よ早も元気に犬ふぐり
( のにもでよ はやもげんきに いぬふぐり )
確かに梅は満開になっており、華やかだったが、他の花はあまり目立たなかった。ただ、注意深く見ると地表を被うように春の野草が花を咲かせていた。ある一画では「大犬のふぐり」が群生して花を咲かせており、春が確実に来ていることを実感した。本日の掲句は、その時の様子を詠んだ句である。
ところで、この句を読まれた時に俳句をやっている人なら、中村汀女の以下の句を思いだされたのではないだろうか。
外(ト)にも出よ
触るるばかりに春の月
上五の命令口調が印象的で、空にぽっかり浮かぶ大きな月が目に浮かぶようである。また、子ら?を呼ぶ作者の弾む気持ちが伝わってくる。普通に詠めば、「外に出れば触るるばかりに春の月」となると思うが、多分これでは記憶に残らなかったかもしれない。
但し、この表現はあくまでも中村汀女のものであり、掲句はどこまで行っても二番煎じの誹りは免れない。従って今後別の表現を考えて行く必要があろうが、一種のオマージュとして残しておきたい。
【関連句】
① 大犬のふぐり小さく咲きにけり
② 街路樹の下に咲いたか犬ふぐり
③ 別世界星の瞳に見ゆるかも
①は、名前が大犬と「大」がつくのに、花は非常に小さいことに着目して詠んだ句。
②は、街路樹の根元の狭い地面に、懸命に咲いているのを見て詠んだ句。
③は、「ふぐり=陰嚢」を嫌って、別称に「星の瞳」があることを知って詠んだ句。少女マンガにでも出てきそうな名前だが、何故か流行らない。
③は、「ふぐり=陰嚢」を嫌って、別称に「星の瞳」があることを知って詠んだ句。少女マンガにでも出てきそうな名前だが、何故か流行らない。
【犬ふぐりの参考句】
いぬふぐり星のまたたく如くなり (高浜虚子)
古利根の春は遅々たり犬ふぐり (富安風生)
犬ふぐり大地は春を急ぐなり (阿部みどり女)
犬ふぐりはりつきて咲く地べたかな (細見綾子)
こんこんと日は恙なし犬ふぐり (森澄雄)