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Channel: 写真・俳句ブログ:犬の散歩道
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野にも出よ早も元気に犬ふぐり  

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■ 野にも出よ早も元気に犬ふぐり
                   ( のにもでよ はやもげんきに いぬふぐり )

イメージ 1先の土曜日、久しぶりに京都の植物園に行ってきた。1月初めに行ったきりなので、1ケ月半ぶりになる。かなり春らしくなったのではと期待していたが、必ずしもそうではなかった。

確かに梅は満開になっており、華やかだったが、他の花はあまり目立たなかった。ただ、注意深く見ると地表を被うように春の野草が花を咲かせていた。ある一画では「大犬のふぐり」が群生して花を咲かせており、春が確実に来ていることを実感した。本日の掲句は、その時の様子を詠んだ句である。

ところで、この句を読まれた時に俳句をやっている人なら、中村汀女の以下の句を思いだされたのではないだろうか。

    外(ト)にも出よ
           触るるばかりに春の月

上五の命令口調が印象的で、空にぽっかり浮かぶ大きな月が目に浮かぶようである。また、子ら?を呼ぶ作者の弾む気持ちが伝わってくる。普通に詠めば、「外に出れば触るるばかりに春の月」となると思うが、多分これでは記憶に残らなかったかもしれない。

イメージ 2掲句は、その調子を真似て詠んだ句である。この句も普通に詠めば、「野に出れば早も元気に犬ふぐり」だが、やや平凡なので汀女の調子を使ってみた。この方が、久しぶりに野に出て、犬ふぐりを発見した時の喜びの気持ちが出ると思う。

但し、この表現はあくまでも中村汀女のものであり、掲句はどこまで行っても二番煎じの誹りは免れない。従って今後別の表現を考えて行く必要があろうが、一種のオマージュとして残しておきたい。

イメージ 3「犬ふぐり」は、「大犬のふぐり」という植物名を短くしたもので、「犬のふぐり」とともに春の季語になっている。掲句は過去に詠んだ句を修正したものだが、他にも
以下の句を詠んでいる。

    【関連句】
     ① 大犬のふぐり小さく咲きにけり
     ② 街路樹の下に咲いたか犬ふぐり
     ③ 別世界星の瞳に見ゆるかも

①は、名前が大犬と「大」がつくのに、花は非常に小さいことに着目して詠んだ句。
②は、街路樹の根元の狭い地面に、懸命に咲いているのを見て詠んだ句。
③は、「ふぐり=陰嚢」を嫌って、別称に「星の瞳」があることを知って詠んだ句。少女マンガにでも出てきそうな名前だが、何故か流行らない。

イメージ 4「犬ふぐり」で詠まれた句は、これまで何句か紹介したことがあるが、今回は比較的好むものを選んで掲載した。

     【犬ふぐりの参考句】
       いぬふぐり星のまたたく如くなり   (高浜虚子)
       古利根の春は遅々たり犬ふぐり   (富安風生)
       犬ふぐり大地は春を急ぐなり     (阿部みどり女)
       犬ふぐりはりつきて咲く地べたかな (細見綾子)
       こんこんと日は恙なし犬ふぐり    (森澄雄)

イメージ 5

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