■ 木犀の金は零れてほしいまま
( もくせいの きんはごぼれて ほしいまま )
1週間ほど前(10月28日)に、「金木犀再び咲いて倍返し」の句を投稿したが、その金木犀も先週末ごろから散り始め、木下のあたり一面、金の花で覆われている。それはそれで風情があるが、もしこれが、本物の金だったらさぞや豪華だろうなどと思いながら上句を作ってみた。
従って本句を素直に読めば、「木犀の金の花弁が思いのままに散らばっている」という句意になるが、金木犀の「金」とほしいままの「ほしい」を絡めた微妙な面白さを狙った句でもある。
ところで、この「ほしいまま」という言葉は、杉田久女の以下の句が頭の片隅にあって思いついた言葉である。
参考句: 谺して山ホトトギスほしいまま
*谺(こだま)
彼女が、福岡県の英彦山(ひこさん)に登った時に、突然谷間からホトトギスの大きな鳴き声が聞こえてきた。そして、それが、谺しつつ次第に遠ざかっていったという体験を詠んだ句だそうだ。
ただ、その時は、上五、中七は即座に浮かんだものの、下五が浮かばず、翌日にもう一度英彦山に登って「ほしいまま」を得たそうだ。恐るべき執念である。そのことを思うと上句にその言葉を使うのは些か気が引けるが、初心者ということでお許しいただこう。
蛇足だが「ほしいまま」は、漢字では、「縦横無尽」の「縦」もしくは、「恣意的」の「恣」を使うそうだ。これまで「欲しいまま」と書くとばかり思っていたが、大きな間違いだった。
尚、金木犀の参考句は、前の記事で掲載したので割愛する。