■ 寒気浴び燃ゆる満天星紅葉かな
( かんきあび もゆるどうだん もみじかな )
この灌木の紅葉は、小さい葉が木全体に重なりながら紅葉し、色に深みがあることから、特に満天星紅葉(どうだんもみじ)と言われ愛でられている。その燃え滾(たぎ)るような色合いは殊に美しい。
尚、本句では、「満天星紅葉」が秋の季語で、「寒気」が冬の季語。従って季重なりになるが、「寒気」を主たる季語として冬の句とする。
因みに「満天星紅葉」に関し、過去に以下の句を詠んでいる。いずれも同じような場面を見て詠んでいるため、あまり変わり映えしないが、視点が微妙に違う。
【関連句】
① まんまるの夕日のごとく満天星紅葉
② 燃えたぎる炎の如く満天星紅葉
①は、街路樹として丸く剪定(玉仕立て)された満天星躑躅が真っ赤に紅葉しているのを見て詠んだ。②は、同じ満天星躑躅の紅葉の赤を燃え滾(たぎ)る炎に喩えて詠んだ。
また、「灯台躑躅」とも書くが、これは、枝分かれしている様子が、かつて夜間の明かりに用いた灯台(結び灯台)の脚部と似通っていることからつけられたとのこと。「どうだん」は、その「とうだい」から転じたと言われている。(異説あり)
【満天星紅葉の参考句】
満天星の紅葉の上の此日暮る (田村木国)
生垣をつづる満天星紅葉かな (山田梅屋)
満天星の紅葉眼下にケーブルカー (初村迪子)
僧提げし満天星紅葉飛び火せよ (手塚 美佐)
満天星紅葉地に硬質の水流れ (若泉真樹)