■ 漆黒の闇に浮き立つ大文字
( しっこくの やみにうきたつ だいもんじ )
大文字山(だいもんじやま)近くに住んでいる関係で、いつも銀閣寺参道の交差点で見るのだが、今年も午後8時丁度に点火され、暗闇に炎の「大」の字が浮かび出た時は、何かしらほっとした。
本日の掲句は、その時の情況を詠んだ句である。「大文字」は、「送り火」とともに秋の季語。
因みに、五山送り火に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 送り火の消えゆく炎過ぎし夏
② 今はまだ送る側にて大文字
③ 大雨を鎮め今燃ゆ大文字
京都に住んでいると、この送り火を見て夏の終わりを実感する。①は、そのことを詠んだ。②は、まだ送る側にいる自分を再確認した句。自分もいつかは送られる側に立つことになるのだろう。
③は、昨年詠んだ句。今年と違って、昼ごろから大雨が降り実施が危ぶまれたが、点火時間にはぴたりと雨が止んだ。
【大文字の参考句】
大文字の火勢の大の真中より (野澤節子)
大文字の消えねばならぬ火を見たり (駒敏郎)
はるかなる火の音はるか大文字 (黒田杏子)
くつきりと彼我の結界大文字 (吉田穂津)
くろぐろと大文字待つあたま数 (川村悠太)