■ 山里に泣いた赤鬼百合の揺る
( やまざとに ないたあかおに ゆりのゆる )
そんな鬼百合を見ながら、ふと「泣いた赤鬼」という童話を思い出し詠んだのが本日の掲句である。人間の友達になりたかった赤鬼。それが今や百合となって皆から愛されている。そんなことをイメージして詠んだ。「鬼百合」の夏の季語。
ところで、「鬼」とは、そもそも何なのか。いつも参照するWikipediaには、以下の説明があった。
「鬼は、日本の妖怪。民話や郷土信仰に登場する悪い物、恐ろしい物、強い物を象徴する存在である。」
ただ、実生活においては、そんな得体の知れない物に会ったこともないし、遭遇したと聞いたこともない。むしろ童話の「泣いた赤鬼」や漫画アニメ「うる星やつら」などの影響で、何となくやさしい鬼のイメージがある。
尚、「泣いた赤鬼」に関しては、その粗筋や動画をネットで見ることができるので、ここで詳細を述べることはしないが、大人になって読んでもいろいろと考えさせられる童話ではある。
【関連句】
① 百合なれど鬼と呼ばれる定めとは
② 鬼百合が熟女に変わる逢魔時
③ 鬼百合やちょうちん横丁縄のれん
①は、百合は美しい女性を形容する時に使われるのに、「鬼」と言われるなんて何という定め(運命)なのだろうと憐れんで詠んだ句。
②は、鬼百合という花の奇異な名前と逢魔時(おうまどき)の怪しげな雰囲気を結びつけて作ったイメージの句。*逢魔時=夕暮れ時
③は、赤い鬼百合が俯きかげんに、いくつも咲いている姿を、居酒屋の赤ちょうちんが並ぶ横町に重ねて詠んだ。
名前は、花弁が赤く黒紫色の斑点がある花姿が、赤鬼に似ているということでそう呼ばれるようになったと言われている。
【鬼百合の参考句】
鬼百合の枯れなんとして鬼々し (寺田寅彦)
鬼百合の鬼々しきを生けて厭く (相生垣瓜人) *厭く(あく)
しづけさは鬼百合の丈そのあばた (森澄雄)
鬼百合に白き雨降る吉野村 (山田弘子)
鬼百合に一掬の海残しやる (櫂未知子) *一掬(いっきく):ひと掬い