■ 恐るることは何もなしエイの泳
( おそるることは なにもなし えいのえい )
京都水族館吟行の第四弾はエイ。様々な魚類が泳いでいる大水槽に大小合わせて数匹泳いでいた。エイを見ると、直ぐに思い出すのが、ドキュメンタリー映画で見た世界最大のエイ、「マンタ」。広大な海中を悠々と泳いでいるのが目に浮かぶ。
ところで、これまで水族館で見て詠んだ句をいくつか紹介してきたが、実はあることが気になっていた。それは、句に詠んだ「山椒魚(さんしょううお)」「海月(くらげ)」「えい」はともに夏の季語で、今の時期にそれを詠むことの是非である。
考えてみれば、、水族館というのはあくまでも人工的に作られた空間で、外の季節とは必ずしも一致しない。だから、句を詠む場合は、水族館という特殊空間を前提として詠むのか、その枠を超えて詠むのかをまず決める必要があるように思う。
前者であれば、水族館に行った時の季節を示す季語を別に入れ、対象となる水生動物の季語は軽く見る。後者であれば、対象の水生動物の季語を重視し、そのものが存在する空間のイメージを広げて詠むことになろう。この場合、句は詠んだ時期ではなく季語の季節の句となり、掲句などは夏の句として残すことになる。
取り敢えずは、以上のように考えて見たが、今後もう少し検討してみる必要があるとは思う。更に、動物園、植物園(特に温室)などで見られるものはどうすべきか。本当の自然の中で動物に触れる機会が少なくなっているだけに悩ましい。
エイは、板鰓亜綱(ばんさいあこう)に属する軟骨魚類のうち、鰓(えら)が体の下面に開くものの総称。鮫(さめ)の一部の系統から底生生活に適応して進化した系統の一つと考えられている。
一般的に頭部から胴部と胸びれが一体になって、全体が扁平な体型になっている。細長い尾に毒棘を持っている種が多く、種によっては刺されると命に関わることもある。
えいを詠んだ句はあまりないが、ネット見つけたいくつかの句を以下に掲載する。
*裏側から見たエイ
【えいの参考句】
地にのこる鮮血えいを競りしあと
(橋本多佳子)
帰るラガーえい水槽のなかに死ぬ
(赤尾兜子)
えいを干す崖の日向に海桐の木
*海桐(とべら) (宇佐美魚目)
引かれゆく赤えい浜を均しつつ
*均す(ならす) (塚原白里)
船火事見し回游ふかくふかくえい
(鈴木勁草)