■ 千両も万両もある古刹かな
( せんりょうも まんりょうもある こさつかな )
先日、古い寺を訪ねることがあった。今は落葉も少なくなり閑散としていた。そんな境内で目についたのは、千両と万両の赤い実。寺のあちらこちらに植えられていた。
写真①左:万両 右:千両
ところで、千両とは、現在のお金に換算するとどれくらいなのか。かつて調べたところによれば、一両が今日のお金で大体10万円~30万円。だから千両は1億円~3億円ぐらいだそうだ。万両はその十倍だからとてつもない金額になる。
話は戻るが、千両、万両では、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 千両万両役者揃いし裏参道
② 千両や雨をまといて艶増せり
①は、歌舞伎などで使われる「千両役者」にかけて作った句である。千両、万両は、この時期の裏参道の花形と言えないこともない。おりしも京都南座では毎年11月末から12月末日まで「吉例顔見世興行」が行われる。
②は、ある雨の日に、濡れて艶光りしている千両の実をみて詠んだ句。普段見る千両とは少し違った趣があった。
写真②左:万両 右:千両
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千両、万両は同じような赤い実をつけるが種類は全く違う。千両は、センリョウ科センリョウ属の植物で、葉の上の方に実をつける。一方万両の方は、ヤブコウジ科ヤブコウジ属の植物で赤い果実を葉の下の方につける。いずれの花も白色で7月ごろに咲く。
両のつく植物には、他にも百両、十両、一両というのがある。この内の百両は「唐橘(からたちばな)」の別名で、 江戸時代、高価で百両以下では手に入れることができなかったため、この名がついたとも言われている。
そして、それよりも実が大きいセンリョウが「千両」と呼称され、千両より実が重いから葉の下に実がつき、しかも沢山なるということで「万両」という名がつけられたと言われている。(異説あり)
また、十両は「薮柑子(やぶこうじ)」の、一両は「 蟻通(ありどうし)」の別名になっているが、これも、赤い実の大きさや数を考慮してつけれられたものらしい。
写真③千両
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俳句で千両、万両は、実千両、実万両、千両の実、万両の実でも詠まれている。以下には、参考になりそうな句をいくつか掲載した。
万両の実は沈み居る苔の中 (高浜虚子)
座について庭の万両憑きにけり (阿波野青畝)
千両か万両か百両かも知れず (星野立子)
千両や一夜の雪に寺の変 (森澄雄)
千両の実だけが紅し日照雨過ぎ (細田寿郎) *日照雨(そばえ)
座について庭の万両憑きにけり (阿波野青畝)
千両か万両か百両かも知れず (星野立子)
千両や一夜の雪に寺の変 (森澄雄)
千両の実だけが紅し日照雨過ぎ (細田寿郎) *日照雨(そばえ)
写真④万両